「アフリカの発信」における闘争 // 発信意義

わたしは、仲間とともに、「アフリカの視点で世界を刺激するバイリンガル・メディア」の展開を予定している。これまでも、ブランド事業や、日本版「WIRED」や、Forbes、Be inspiredなどのメディアを通じて、様々なアフリカの視点を紹介する記事を執筆してきた。しかしまだ足りていない。

なぜ、いまアフリカを視点を発信する必要があるのか。

 

「シングル・ストーリーの危険性」

世界的に著名なナイジェリア人作家、チママンダ・アディーチェは、「シングルストーリーの危険性」について指摘する。アフリカに関する報道が、貧困や紛争など「悲劇」に結びついているものにあまりに偏っている現状に対して警告する。「シングルストーリーは、人間の尊厳を奪う」と彼女はいう。アフリカは多くの場合、「(社会)課題」や「課題解決」の文脈で扱われる。アフリカ人の個々のアイデンティティや主体性は背後に押しやられ、「貧困」や「雇用」といった経済社会的な枠組みの中でラベリングされがちだ。

多様な国や文化によって形成されるアフリカに関する英語報道は増えてきているものの、まだアフリカの現状と世界の人々の認識には大きなギャップがある。日本語の文脈においては、さらにギャップは大きい。過去数年、アフリカ系デザイナーとのブランド構築事業を手がける中、日本でもポップアップショップやイベントを開催してきたが、多くの日本人にとってまだまだアフリカは遠く、無関係な存在で、同時代のアフリカに対する情報があまりに乏しいことが明らかだ。アフリカ人にとっても、アフリカ外にとっても「もったいない」かつアンフェアなこの現状をなんとかしたいと思っている。

 

若者が牽引する、枠にとらわれない視点

アフリカ大陸の人口の平均年齢(中央値)は、19.5歳。12.6億人の6割が、25歳以下の若者だ。若者は既成概念にとらわれず、新しいモノ・やり方を生み出すエネルギーに溢れている。外国人などよそ者に対してもオープンなことが多く、クレイジーなアイディアを試したり、「ノリ」で新しい挑戦をしたがる傾向にある。新しい技術やアイディアの導入に対しても抵抗を感じにくい。世界がダイナミックに変化するなかで、アフリカの若者と連携して、未来をつくっていくことに可能性を見出している。

 

アフリカ視点のカルチャーの輸出、ソフトパワー強化

過去数年、南アフリカやケニヤなどに定期的に渡航するなか、特にクリエイターたちの動きに魅了されてきた。クリエイターとは、主に、デザイナーや写真家、シェフなどカルチャー産業に貢献する起業家たちだ。植民地支配、アパルトヘイトを始めとする人種差別、国際援助などのシステムのなかで、アフリカ系の人々はアイデンティティの葛藤を持ち続け、プライドを持てなかった。前述のクリエイティブ系起業家たちが、カルチャーを再構築し、アフリカをグローバルに誇れるブランド(=高付加価値商品)として輸出することは、経済的な繁栄と社会的な安定に貢献しつつある。彼らのようなクリエイティブ起業家のストーリーを輸出することで、アフリカのソフトパワーの強化に寄与したい。

事業モデルとしては、アフリカ進出をすでに果たしている企業もしくは、進出に興味がある企業とのパートナーシップで、彼らの事業展開のストーリーの展開の対価としてのスポンサーシップの獲得を目指す。ウェブ発信については、読者からのサブスクリプションモデルも検討する。