DRONERAはガーナでドローンビジネスをしています!

初めまして、ガーナでドローンの事業を行なっている、湯山和貴(ゆやまかずき)です。DRONERAはガーナで「ドローンが当たり前に飛び交う社会」の実現を目指して、ドローンを使ったサービスの提供や、ドローン技術を開発し提供しているスタートアップです。2018年から西アフリカのガーナで事業を進めています。

例えば、建設会社にドローンを使った工事の進捗管理のための定点観測サービスを提供したり、採石場でマッピングやストックパイルの管理サービスを提供しています。また、ガーナの社会問題である「未整備な道路」とそれによって発生する「渋滞」や「事故」などの問題を解決するために、主にインフラ産業に目を向けています。

ガーナの場所

 

さて、ここまで読んだみなさんは疑問を持っていることでしょう。「なぜDRONERAはアフリカなの?」「なぜガーナなの?」などなど。これらの疑問はもっともなものです。これらのもっともな疑問にカリッと答えていきます。ただし、長文です…

なぜアフリカなのか?

たくさんの理由を挙げることができますが、最重要な理由は「リープフロッグを起こせる市場だから」です🐸アフリカは、他のどの地域よりもリープフロッグを起こせる確率が高い地域だと考えることができます。

リープフロッグ」という言葉を知っていますか?省略せずに言えば「リープフロッグ型発展」とでも言うもので、これは経済発展の一つの形態です。社会インフラ等が未整備な新興国において、それが一歩ずつ改善されるのではなく、一足飛びに最先端化することを指します。これを、カエルが大ジャンプすることに喩えて “leapfrogging” と言うのです。

関連画像

leapfroggin

 

これは単に「アフリカは社会インフラが日本より未整備だ」ということを言っているのではありません。既にアフリカではそのような事例がたくさん起こっているのを見て、「アフリカにはリープフロッグを起こす最適な素地がある」ということを言っているのです。

アフリカで起きた最大のリープフロッグの実例は、モバイル決済の爆発的な普及でしょう。ケニアの通信事業者であるSafaricom社はM-Pesaというモバイル決済サービスを提供していますが、なんと2017年のケニアのGDPの約50%に相当する額がM-Pesaによって取引されているのです!これは小切手や銀行振込、クレジットカード払いが普及した日本ではまだ起こっていない、Fintechの驚くべきリープフロッグ現象です。

 

ガーナには高い建物が少ない

 

DRONERAは、ドローンがリープフロッグ型の発展をアフリカにもたらすことが出来ると信じています。例えば、アフリカは日本のように高い建物が多くない (ガーナで最も高いビルは89mです) ので、日本なら必要になるような障害物回避システムの開発は最小限で済みます。また土地が広く、住宅が隙間なく存在するわけでもないので、日本のようにドローンの墜落リスクを常に懸念しなければならないような場所でもなく、意欲的な挑戦を阻む障害が少ないです。アフリカは「ドローンが当たり前に飛び交う社会に」という世界をガラリと変えたいDRONERAのビジョンが最も早い時期に実現するかもしれない場所なのです!

なぜガーナなのか?

これにも多くの理由がありますが、ここでは最重要な2つの理由を紹介します。1つ目の理由は「ガーナがドローンの規制が十分に整備されている国だから」です。規制があることは一見すると事業展開に不利にも見えますが、実は適切な規制があることは事業展開にむしろ有利なのです。これについてはWIREDに寄稿された記事にも詳しいです。

適切な規制とドローン産業の発達についての重要なベンチマークは、アメリカの航空輸送ビジネスです。第一次大戦で鉄道網が破壊された欧州に比べ、戦場にならず鉄道網の整備が進んでいたアメリカでは航空輸送の普及が遅れていました。遅れを挽回するためにアメリカの連邦政府はまず航空輸送をの利用を促進させる政策を取り、その後も1930年にマクナリー=ウォトレス法を制定して現在の航空業界のビッグ4 (Eastern Air Lines / Trans World Airlines[*1]/ United Airlines / American Airlines) の成長を促しました。これは現在でもアメリカの航空産業の競争力の源泉となっています🛫

*1 Trans World Airlines は2001年に American Airlines に吸収合併されました。

 

2018年3月現在で、ドローンの規制が整備されている国の一覧が上の図です。この図で示されているのは、アフリカにはドローンに対する「適切な規制」はおろか、ルールそのものがまだ存在していない国もあるということです。ガーナはアフリカで最も早く適切な規制と活用について政府が検討した国の一つであり、ドローンの正しい活用が見込める重要な市場であることがこの資料から見て取ることができます。

2つ目の理由は「ガーナが西アフリカ経済の中心だから」です。西アフリカにはECOWAS (Economic Community of West African States) という経済圏があり、この中でガーナは指導的地位にいます。経済規模もECOWASの15カ国のうち第2位と上位であり、さらに2010年に7.9%、2011年に14.0%と高い水準で経済成長を遂げています。日本が最後に7.9%よりも大きい経済成長率を記録したのは1973年(8.0%)で、これは高度経済成長期と呼ばれていた時代です。この成長性こそ、DRONERAがガーナにリープフロッグの可能性を見出した根拠です。

ガーナと日本の経済成長率の比較

 

「ガーナは2位なのか。じゃあECOWASで1位の国はどこ?」と思われた方もいると思います。1位の国は、ガーナの東、トーゴとベナンを挟んだナイジェリアです。「2位のガーナではなく、1位のナイジェリアに行けばいいのでは?」と疑問があるかもしれません。ナイジェリアは確かに魅力的な市場ではあるのですが、DRONERAはある理由から、戦略的にガーナを優先する判断をしました。

GPI評価の地図

国際的なシンクタンクであるInstitute of Economics and Peaceは、世界各国の治安、テロリスク、警察体制など複数の指標を組み合わせた複合指標である GPI (Global Peace Index) を発表しています。2018年版のレポートで、ガーナは High (高い安全性) と評価された一方で、ナイジェリアは最低評価である Very Low (かなり低い安全性) と評価されています。DRONERAが確かな事業を展開し圧倒的なゲームチェンジャーになるために、ナイジェリアより先にまずガーナを押さえたい理由はここにあります。

なぜ道路なのか?

ガーナが重要な国だとは言え、ガーナ国内にも多くの産業があります。他のどれでもなく、道路に関する事業をDRONERAが選んだのはなぜでしょうか?これにもいくつも理由がありますが、重要な3つを簡単に紹介します。

1) 巨大な経済の大動脈だから

ガーナは南にギニア湾を擁し、首都Accraから東に29km地点にあるTema港は外海に人工的に建設されたものとしてアフリカで最大の港です。コンテナ貨物の取扱量も2008年、2009年と連続で500,000TEUを上回っており、これは西アフリカ最大級の取扱量です。Tema港は単にガーナの輸出入貨物を取り扱っているのみばかりではなく、海を持たないサヘル内陸国ブルキナファソおよびマリ、ニジェールへのトランジット貨物の玄関港でもあります🚢

テマ港は西アフリカの玄関港

そしてガーナは、西アフリカの中央部という戦略的な地理的位置を占めています。国際幹線道路により西のコートジボワール、北のブルキナファソ、東のトーゴと接続し、アフリカ横断道路網の一部である西アフリカ横断沿岸高速道路はベナンを通過してナイジェリアと結ばれます。ガーナのすべての幹線道路は陸封国であるブルキナファソを結び、貿易の要となっています。

要するに、ガーナは大きな港を持ち、そこで輸出入される膨大な量の貨物は当然ガーナの道路を通って多くの国 (または多くの国から) 運ばれています。ガーナの幹線道路は西アフリカの経済を支えるインフラであり、大きな重要性を持っているのです。このため道路産業の構造を変えることは、ガーナに限定されない極めて大きなインパクトをもたらすことになると考えたのです。

2) 壊れてるから

ガーナの道路は壊れています。2013年のガーナの道路のうち「良好」な状態の幹線道路は52%、同様に都市道路は49%、地方道路については30%に留まり、半分以上の道路に問題があるのが実態です。さらに適切な道路の維持・補修が行われているのは全体の45%に留まっており、道路を効率的に点検し、その成果を速やかに補修に反映することはガーナの喫緊の課題です。

都市部でも道路の破損が目立つ

 

道路の破損は、交通渋滞の発生確率を上昇させます。先に説明した膨大な量の貨物の輸送には、必要以上の時間が浪費されている恐れがあるのです。これらの破損がすっかりと補修されれば、これまで可視化されていなかった損失が解消されることが見込めます。ガーナの道路が修理されることで、ガーナの経済全体がメリットを受けられるとDRONERAは期待しています。

 

そもそも、壊れた道路は特定の誰かのみを困らせるわけではなく、全ての人に不利益をもたらす意味で「災害」とすら言えます。わだち堀れによるハンドル誤操作や排水不良、ポットホールと呼ばれる舗装の剥がれ等は重大事故につながる恐れがあり、交通事故を誘引します。2013年のガーナでは、道路における死亡事故が2,095件、軽傷事故が14,390件も発生しているのです。ガーナにおける、解決すべき深刻な課題は道路にあるのです。

3) ガーナの政策が道路修理を重視しているから

どれほどガーナの幹線道路が重要でも、ガーナ政府が全く点検や修理に関心を持っていなければ話は違ったでしょう。しかし、実際にガーナ政府はこの問題への取組を既に始めています。DRONERAがその取組の成果を最大化するお手伝いができれば、こんなに光栄なことはありません。

2018年にGHA(Ghana Highway Authority)はこの問題を解決するために、新しい機械やシステムを導入するための予算を1億円も確保しました。これはGHA道路維持部門の年間予算の約5%を占める額であり、道路破損の問題の解決に向けて必ず前進しようという決断があったことが分かります。ガーナ政府はそのための技術導入・技術輸入にも意欲的で、2017年4月には日ガーナ官民インフラ会議を首都アクラで開催し、日本の優れたインフラ関連技術のガーナ国内への導入を推進しています。

なぜドローンなのか?

これまで述べてきた道路の問題に対して、なぜドローンが最適な解決策なのでしょうか?これまで実施されてきた道路点検の手法を見ていき、さらにその他の選択肢よりもドローンが相応しい理由があるのです。

1) これまでの点検手法

これまでのGHAによる道路状況調査では典型的に、エリアマネージャー2名、技術者2名、運転手1名の5名1組の班が必要でした。この班を単位として、車で少し移動しては停車して降り、路面状況を確認してメモを取るという作業を14,000kmの道路全てで実施していました。これは極めて大変な仕事です。GHAは全ての道路を年1回点検することを基準としていますが、2016年の年間計画が2017年4月時点で完了していないなど、効率性の向上がこの事業の成功の鍵となっています。

非効率な点検手法

 

ドローンを使用すれば、最初にルート設定さえ行えば必要な点検は自律飛行で実行できます。点検項目の確認作業はパソコンなどで行えるため、各班の必要人員は最少1名に削減されます。ドローンによる作業の自動化には、省力化の他に時短の恩恵もあります。

また手書きのメモには間違いが混入する恐れがあります。実際に点検成果報告書のいくつかには、存在しない破損について記載があったり、反対に存在する破損について記載がないことがあります。ドローンなら現場の証拠写真を残すことが出来るため、過不足なく破損をチェックすることができます。またドローンにはGPSが搭載されているため、データから破損の具体的な場所まで特定することも出来るのです。下の画像はガーナのとある道路200mをドローンで撮影し、破損箇所を矩形で囲んで表示した例です。

ドローンなら正確に破損箇所の特定が可能

2) その他の点検手法

例えばMMS (Mobile Mapping System) は道路の路面性状を調査する技術の一つです。MMSとは、車両にGPSアンテナ、レーザースキャナー、カメラなどの機器を搭載し、走行しながら道路周辺の3次元空間位置データを取得できる移動計測機器です。典型的なものでは絶対精度10cm以内ほどで、路面性状調査で活用されています。下にTOPCON社製のMMSの画像を引用しました。

ドローンがMMSと比べてあらゆる点において優れているわけではありません。ただ、ドローンによる点検のいくつかの特徴は今回の目的に適しており、少なくとも「GHAの事業にとって」という意味ではドローンに分があると考えます。主なものとして、MMSでは色付き点群を得ることが難しい点 (ドローンなら簡単です)、機械の単価が高くガーナ全国に配備するのに莫大な予算が要る点 (ドローンは極めて安価です) などが挙げられます。

要はGHAの課題に対してドローンが最適だったという点が重要です。

 

以上、DRONERAがなぜアフリカ・ガーナで事業を行なっているのか、なぜ道路(インフラ)市場を狙っているのか、なぜドローンを使うのかについて、説明しました。

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