No.21 TOPISH Bakery ~失敗談~

ガーナのパン屋の石本です。
大変有り難い事にご支援頂ける事となりましたので、引き続きガーナのパン屋について書き綴って行きたいと思います。
お付き合い頂けましたら幸いです。

 

今週の水曜日、スタッフから緊急の連絡が入りました。

 

「石本、やばいぞ。お客さん達がパンの味に文句を言ってきてるぞ!配達員たちもパンの味がおかしいから、これでは販売できないと怒ってるぞ!」

 

最初は何か材料の配合を間違えたのかな?と思いましたが、すぐに新しく使うように指示したある材料のせいだとわかりました。

 

Cassa Flour(キャッサバ粉)です。

 

昨今、ガーナセディが弱くなるにつれ、高騰する原料価格をなんとかする為、ローカルで手に入る材料でコストダウンを図れないか検討していた時、ナイジェリアのパン屋がCassava Flourを使っているという資料を読み、先週から試験的に試してみていたのです。

 

値段も小麦粉に比べて安い上、パンに重み(もっちりとした食感になる)との事だった為、これはやるしかないと、クマシの製粉業者から試験的に買ってみる事にしました。

 

5%を上限に2回小規模での試験を実施(小麦粉50kgに対してキャッサバ粉2.5kg)したのですが、結果は良好。特に香りも味も食感に大きな変化は見られず、わずかですがコスト削減に貢献してくれそうな印象を持ったのでした。

 

そして、試験を行った翌週、石本は工場を離れていた為、量産用のキャッサバ粉をスタッフに買い出しに行ってもらい、約1300個の食パンを生産・販売してもらったのですが、このキャッサバ粉が発酵してしまっていた様です。

 

キャッサバ粉は発酵すると酸味が強くなり、生地の中の糖分や香りを消してしまう様であり、見事に味気ないパンとなってしまったのでした。

 

結果的には、150個(15000円ほど)は売れ残り、買ってくれたお客さんからもクレームの嵐、値下げをしなければいけない状況となってしまいました。
すぐに150個のパンは損金として計上し、今回のレシピ変更指示による一件ついては、石本の指示不足・判断ミスによる所があった為、スタッフたちに謝罪しました。
また、今後美味しくないパンを売ってしまったお客さんたちにも少しずつ補填をして行き、信頼を取り戻せる様に対応していく予定です。
キャッサバ粉が救世主になりうるかと期待していましたが、新しい事を試すには慎重にならないと、と良い教訓となりました。

 

売れ残ったパンは有り難い事に近隣の豚農家さんが引き取ってくれました。
(自分たちでも養豚ありだな、と思いました。)

No.20 TOPISH Bakery ~今後やりたい事~

ガーナのパン屋の石本です。
個人ブログだったら絶対20回も更新できてなかったと思うので、アントレアフリカに応募して良かったです。感謝。

 

さて、今までは時間的・資金的(・能力的にも)制約があり、事業の収益化の為にやるべき事を最優先させてきました。

 

良く、日本人なのになんでガーナ人と同じパンを作っているの?同じ様に流通させているの?と質問されます。自分もできる事ならばオリジナリティのある商品開発や流通形態の構築なんかを手がけてみたい、と思いつつ、目下スタッフたちの給料や家賃などの固定費を確保しなければいけない為、市場開拓・収益化まで時間がかかる新商品・新業態よりは、まずはすでに大きな市場のある食パンで事業基盤を確保したわけです。

 

*機械も材料も全部クマシで手に入るもので作ってます。

 

2018年9月、10月と漸く黒字化を果たし、痛んできたオーブンやパンの型、配送用のボックスなどの修繕に少額ながら投資する事ができた反面、新しい商品や業態へ挑戦するほどの資金を貯めるには長い時間を要してしまうのが実情です。

 

*パンの型も定期的に修理・購入していかないといけません。

 

食に対して保守的であるクマシの人たちに受け入れてもらえる新商品の開発を目指して、今は時間を見つけては試作品を作ってはガーナ人スタッフたちに食べてもらっています。メロンパン、クリームパン、エッグタルト、サンドウィッチなどを作ってみましたが、これからやってみたいのはチョコレート系のパンや菓子系(ブラウニーなど)です。

* ガーナの主力輸出産品であるカカオ。

ガーナでは、まだまだチョコレートは比較的高価なもので日常的に食べれる様なお菓子ではありません。また、暑いガーナでは油脂分の少ない溶けない固いチョコレートが売られているか、溶けるチョコレートはクーラーの効いているスーパーなどでしか売られていない為、日常的に消費する様なお菓子になるにはもう少し時間がかかるのではないかと考えています。

 

*ガーナでもBean to Bar Chocolateを手がける人たちが出てきました!

そこで、焼きチョコの様な、チョコブラウニーの様な、溶けずに外でも販売できる様なコスト抑えめなお菓子を作って、提供できないかな〜と考えています。
パン屋を始めた時の様な、100個作って90個売れ残る、みたいな事になると思うのでタイミングと規模を見極めつつ取り組んで行きたいと思っています。

 

もう1つは、ストリート・ベンダーの組織化です。

*毎朝のストリートベンダーへのパンの配送風景。1日平均1500個のパンを配送します。

現在既に、パン売りの主力ストリート・ベンダーおよびKIOSKオーナー、約120人と商売をさせて頂いていますが、クマシの街の中に行くと、車の窓を清掃する人(大抵は勝手に拭いて、あとでお金を要求するのでドライバーから疎まれている)や仕事がないからと座っているか物乞いをしている人たちが見受けられます。

 

「それだけの体力と熱心さがあるのであれば、うちのパンも売ってくれないかな。商品があれば販売して生計を立てられるのに」

 

と思い、マネージャーたちに相談するのですが、「彼らはパンを持ち逃げする可能性があるからそんなリスクな事は今は難しい」と諭され、諦めてきました。
彼らをTOPISH Bakery直属のストリート・ベンダーとして纏め上げ、売上の管理をできるスタッフの雇用・仕組みづくりなど、今後是非取り組んで行きたいと思っています。

 

時間はかかると思いますが、やってみたいと思うことをこれからも1つずつ形にしていけたらと思っています。応援よろしくお願いします!

No.19 TOPISH Bakery ~新ロゴ&パッケージ~

新生ガーナのパン屋の石本です。
今日からTOPISH Bakeryと名乗ります。
個別メッセージでのご指摘・激励・いじり、有難うございました。
さて、TOP Bakeryの会社のロゴというとこう言ったもの(図1ご参照)があったのですが、これはTOP Bakeryの前身でAflo.Bizという会社を作った際のロゴ+TOP Bakeryという名前を併用しただけだったものでした。
今回、会社にするにあたり、ガーナのデザイナーに色々お願いし、新生ガーナのパン屋、TOPISH Bakeryのロゴを作ってもらう事にしました!
すっかりガーナのパン屋の顔になったWofa Kが新ロゴの中心になっています。
どこまでこのWofa K(Kおじさん)一本押しで行けるかわかりませんが、行けるところまで行きたいと思います。
そして、新会社になるのでパッケージも新しいものを仕込み中です!
子育て中で忙しい姉に睡眠時間を削ってもらい作ってもらったNew Design!
2パターン x 3カラー の全6種類!「6種類全部印刷したい!」とマネージャーたちに相談した所、「キャッシュフロー的に無理だからまずは2種類にしてください!」と諭されました、、、
その内余裕資金が出てきたら全カラー揃えてやる!と思いつつ、今回は2種類を発注する事にしました。
3年前は、デザイナー探しから、印刷用ブロック職人探し、プラスチック・印刷会社探しまで大変時間がかかった作業も、この3年間で蓄積された人脈とノウハウで短期間でアレンジができる様になりました。こうした経験やネットワークは本当に大きな財産だと思います。
スタッフたちも新しいパッケージが待ち遠しいらしく、「このパッケージなら自信を持って売れるよ」と言ってくれました^^
Xmasに向けて打てる施策をどんどん打って行きたいと思います。

NO18 TOP Bakery ~新会社登録~

ガーナのパン屋の石本です。
TOP Bakeryの経営状況が改善してきた為、今までLocal Enterprise(自営業的な規模の会社向け)で登録してあった事業を、Local Company(株式会社)として登録し直す事にしました。
会社として登録する事で、会社側へのメリットは殆どないですが、スタッフ達へはSSNIT(Social Security and National Insurance Trust)への加入する事ができ、その費用の多くは雇用者側が支払う形となっています(雇用者-13%、従業員-5.5%、合計18.5%)。今回、会社として長く事業を継続して行く為にも、そしてスタッフ達が安心して働けるようにする為に、株式会社化する事にしました。
会社の登録をしにRegistrar General Departmentにいき、TOP Bakery Company Limitedの名前で申請すると、「既に登録がある為、その名前では登録することができません」とまさかのNG。それではと、TOP Internationalではどうかと再申請したものの、「その名前も登録することができません」と却下。
これは賄賂を請求されるパターンか?と少し勘繰りましたが、担当のおばちゃんから「他と被らない名前を考えてまた持ってきてね〜」と申請書類を突き返されたので、再度マネージャー達と会社名について考える事にしました。
– Wofa K Bakery (商品名にちなんで)
– TOP of TOP Bakery (もう一個TOPを足したら流石に大丈夫だろう、と)
– ISHIMOTOP Bakery (Ishimoto + TOP)
自分たちのセンスのなさにくじけそうになりましたが、ISHIMOTOP Bakeryを回避する為、別の友人に相談したところ、「TOPISH Bakery (TOP + ISH(IMOTO)」にしたらどうかとアドバイスをもらいました。パン屋のスタッフ達もその名前がいいと同意し、RGDに持って行くとTOPISH Bakeryは登録okという事で無事受理してもらい、手続きをスタートしてもらう事になりました。
併せて、TOPISH Bakeryとして働く上で大切にしたい事を、意味付けする事にしました。
T – Team work(チームワークを大切にして助け合いながら働く事)
O – opportunity(就業・成長の機会をこれからも提供して行く事)
P – patience(難しい局面でも忍耐強く頑張る事)
I – innovative(イノベーティブである事)
S -smart & strong(スマートに、そして強くある事)
H – hard working & honest(一生懸命、そして正直である事)
何事もなく登録が進めばいいな〜と思います。
が、エチオピアで妻と友人から「~ishって〜っぽいってふんわりした感じにならない?」と言われ、ハッとしました。確かにboyish、yellowish etc
TOPISHって「TOPっぽい」ってなっちゃう…でも、ま〜いいか。TOPっぽいなら。辞書引いてみたらishにも他の意味もあるみたいだし。
スタッフに聞いても、「TOPISHいいよ〜、石本気にするな!」と言ってもらえたので、ガーナ人スタッフ達がokならokという事で、今後はTOPISH Bakeryとして事業を登録します!なんとなくTOP集団に入れる様に頑張ります!

No.17 TOP Bakery ~インパクト~

ガーナのパン屋の石本です。
今回はTOP Bakeryを通じて起こしたい”インパクト”について考えてみました。

 

“インパクト”と聞くと、どうしても何万人に電気を届ける、何千世帯の収入が増えるなどの数を考えてしまうのですが、自分の場合はパン屋なので数字的にみるとどうしても見劣りしてしまうのかな〜と思います。

 

1日平均1500個のパンを作っているので、1ヶ月22日稼働で約33,000個のパンを販売、1世帯平均5人だとみて、「165,000人に美味しいパンを届けている!」とか行っても嘘くさいし普段から意識してないしな〜と思ってしまうのが正直な所です。

 

勿論美味しくて、お客さんに喜んでもらえるパンを作り届けることはパン屋としての義務であり喜びであると思うのですが、それよりも自分が大事にしているのはパン屋のスタッフの生活であり幸せかな、と思いました。

 

顔の見えない何万人の消費者よりも、一緒に働いているスタッフ達がいかに健康的に楽しく充実して仕事・生活しているか、それが自分にとっての最優先事項であり、自分が大切にしているインパクトなのだと思います。たった20人ばかりの小さなパン屋ですが、彼ら・彼女らの周りには多くの家族や友人がいて、きっとスタッフ達の仕事に対する姿勢や経済的自立はその周りの人たちにも影響していくだろうと思うのです。

 

この3年3ヶ月の間で進学や転職、結婚、出産などスタッフ達の様々な人生のイベントに関わらせてもらった事は、自分にとっても幸せな事であり、今後も一緒に働いてくれるスタッフ達を大切にしていきたいと思うのです。
(10月分の初給料は、プロダクション・マネージャーの結婚式サポート費用として消えました。)

 

今はパンの製造と卸を中心に事業展開していますが、今後やりたい事としては、

 

1. パンの小売(自分たちでストリート・ベンダーを組織して直接消費者へ販売)
2. カフェ・ベーカリーの運営(クマシにまだ少ない日本式カフェ・ベーカリーの運営)
3. パン以外の食品加工業への展開

 

などがあり、今後もガーナ現地で関われるスタッフの数が増えていけばいいなと考えています。

 

最後に、ガーナ外へのインパクトを考えた時、2つのインパクトが少しでも起こせればいいなと思っています。

 

1つは、石本を通して少しでもガーナを身近に感じてもらえる事。
もう1つは、石本も何とかやってる、自分も好きな事を頑張ってみよう、と、少しでも誰かの励みになる事。

 

自分がガーナでのパン屋の仕事を通して起こせるインパクトはこんなものかな〜と思いますが、今後も多方面にわたって新しい仲間を作りながら、1人では起こせないインパクトを起こしていけたらと思っています。

No.17 TOP Bakery ~初給料~

ガーナのパン屋の石本です。

Kumasiでパン屋を始めてから、3年4ヶ月。初めて給料をもらいました。

ガーナでは給料の未払いがよく発生するそうですが、TOP Bakeryではスタッフ達に安心して働いてもらう為、赤字の時でもスタッフの給料は最優先に支払われる様に努力してきました。

 

今までは、事業を確たるものにする為、そして大きくする為に全ての収益を再投資してきた為、自分自身への給料の支払い受けずにやってきました。

 

10月度は、借入金の返済や設備投資に資金を回した上で、ギリギリながら石本の給料を捻出するだけの収益が確保できた為、スタッフが給料をお取置きしておいてくれました。

 

金額にしたら日本の初任給の1/10程度ですが、それでもスタッフ達からしてみたら大きな金額です。

 

「一緒に働いているんだから石本も給料をもらうのは当たり前じゃないか。」

 

まるでどちらが社長かわからない感じでしたが、有り難く頂戴しました。

これからクリスマス商戦に向けて色々仕掛けて行きたいと思っているので、出費は嵩みそうですが、みんなのクリスマス・ボーナスを確保する為、頑張って行きたいと思います。

 

 

No.16 TOP Bakery ~お掃除編~

ガーナのパン屋の石本です。
前回はTOP Bakeryを再生する為の過程について書かせて頂きました。
今回は事業再生期の後半について書こうと思ったのですが、まだ書くに書けない事もある為、とりあえずお掃除編です。

 

エチオピア旅行から帰って来て、やるぞ〜!と気合い十分で帰って来たのはいいものの、早速現実に打ち当たることになりました。
10日間の不在中に、スタッフ達なりに頑張っていたことも伺えましたし、そんなにトントン拍子でいくはずもない事もわかっているのですが、何度も指摘していた同じミスの繰り返しについては厳しく対応します。

 

「記憶は頼りにならないから、ノート&エクセルに記録しましょう!」

 

初日は朝からずっと10月の取引記録の整理に追われ、漸く夜に10月分の締めをする事が出来ました。途中から、口調も態度も厳しくなってしまい、担当スタッフも涙を目に浮かべて声を震わせるほど傷つけてしまった事に自己嫌悪し、自分の未熟さを反省しました。

 

スタッフ達なりに精一杯頑張ってくれていたのに、彼らの出来なかった所ばかりに目がいってしまい、「もっとちゃんとやれるはずなのに、なんで???」と期待と現実のギャップにイライラしてしまいました。

 

翌日は、パンの製造がお休みだった為、朝からスタッフ達と一緒に時間を過ごす事にしました。いつも仕事の話や指示が会話の中心だった為、短時間でも雑談をした事でスタッフ達からも様々な話や意見を聞く事が出来、皆んなの近況を知る事が出来、彼らの年末年始の過ごし方やプランについても話が盛り上がりました。

 

「クリスマスは稼ぎ時だから休みはいらないぜ、その分クリスマス・ボーナスを頼むよ!」

「1月中旬は、生産マネージャーの結婚式だから、みんなで4日休んでお祝いをしに行こう!」

 

久しぶりにゆっくり話せた事で、やっぱり自分にとって彼らと仕事をする事が何よりも楽しいし幸せだな〜と感じました。
ふと工場内を見渡すと、一見綺麗にしているように見えて、至る所にゴミが隠されており、虫がはびこっているのが目につきました。

 

何気なくゴミを広いはじめると、他のスタッフ達が「石本、俺たちがやるから」と手伝い始めてくれました。最初はちょっと目に付く所だけ片付けようかと思いましたが、「汚いものに蓋をして見えない様にしているマインドが良くない」と気づき、倉庫の奥からゴミや使わなくなった道具達を引っ張り出してはゴミ置場にせっせと運ぶ事にしました。

*うちのスタッフじゃないけど、たまたま遊びに来ていて掃除を手伝う人。

 

最初は、ちょっとしたら石本も「あとは任せた」と掃除をやめるだろうと思っていたスタッフ達も「やばい、今日の石本は本気だ」と途中で気づき、本気のお掃除モードに。グチグチ文句を言うスタッフもいれば、積極的にオーブンを洗ってくれるスタッフもいて、気がつけば3時間の大掃除になっていました。

*この後にオーブンまで綺麗に洗ってくれたスタッフ。

 

まだまだ掃除しきれてない所もありますが、これからは毎週しっかりお掃除チェックをしていきたいと思います。掃除後は思い思いの休日を過ごしている様で、私も気持ちがスッキリしてこの投稿を書いています。案外、何か物事が進まない時、掃除に集中するのは良いのかもしれません。(少しでも何か進んだ実感が得られる&体を動かす事で気持ちもスッキリする)

*纏まった洗濯物を手際よく洗います。夕方からはサッカーに行くそうです。

 

掃除終わり後、女性スタッフたちが手作りのバンクー&シトを分けてくれました。
*バンクーとシトを作ってくれています。うちの女性スタッフは料理上手!

また午後も頑張ります^^

No.15 TOP Bakery 再生期・中盤

ガーナのパン屋の石本です。
前回はTOP Bakeryの再生の様子について書かせて頂きました。
今回は事業再生の具体的な過程について書かせて頂きます。

 

材料調達については、負のサイクルにどっぷりハマっており、抜け出すことは優位ではないとすぐにわかりました。

 

材料を買掛金で購入する(後払いの分、材料費が高くなる) → パンを作り販売する(材料高の為、低利益)→ 材料費を返済して次の材料をまた買掛金で調達する

 

また、少し手元に利益が残ると、原料サプライヤーから取り立てに合う為、現金は常になく、急な支出が必要な際にはまた原料サプライヤーに借金を負う、と言うサイクルになっていました。

 

この様な環境下で、まずは2つの事に取り組む事にしました。
1つは、材料とサプライヤーの変更。もう1つは、レシピと生産体制の見直しでした。

 

材料については、為替の影響もあって年々値段が上がってきているにも関わらず、マネージャー達も改善に無関心で、気が付けば粗利で一桁台となっていました。(パンは粉物なので利益率は比較的高いはずなのですが、ガーナの場合は一斤あたり900〜1kgほどあり、元々利益率は低め)これではどんなに数を売っても利益は出せません。

 

すぐに、生産スタッフ達を連れて、原料サプライヤー達のショップを回り、材料の市場調査を行いました。
多くの材料サプライヤーがパン屋からの買掛金の未回収で苦しんでいる昨今、今にも潰れそうな信用力のないTOP Bakeryに新しく掛取引をしてくれる会社はなく、何社も回っては値段・質・決済条件が見合う材料・サプライヤーを探しました。

 

そんな時、シンガポールに住むインド人経由で紹介してもらったレバノン人サプライヤーから、「彼の紹介だから、君に買掛金でマーガリンとミルクを販売してあげよう。値段は現金払いと同じ金額でいいよ。好きなだけ持っていくといい」と泣きたくなるほど有り難いオファーをもらう事ができました。
翌日には約束通り、1500kgのマーガリンと150Lの缶ミルクが工場に届けられました。そして、その金額は今まで回ってきたどこのサプライヤーよりも安く、約束していた値段から更にディスカウントしてくれていたのです。

 

価格競争力がある材料を手に入れた私たちは、次にレシピの見直しと生産工程の見直しに着手しました。

 

TOP Bakeryのパンは、他社のパンよりも大きく重たい為、十分な利益を確保する為には一個あたりのパンのコスト管理が重要になります。
最初の数日は、新しい材料と配合を試し、限られたコストの中で味・食感を維持できる様に様々な試行錯誤を繰り返しました。
また、一番気になっていた生産量のブレについても検証するする事にしました。これまで小麦粉1袋で大きなパン(Wofa K)を80個ほどの生産していたのですが、計算上は85個以上生産できるはずだったのです。遠隔で何度も確認する様にと伝えていたにも関わらず、見直される事がなかった為、今回は石本が現場張り付きで管理する事にしました。

 

以前、デジタルの量りを導入した事があるのですが、測量までの時間が2~3秒かかり生産性が落ちる為、スタッフ達は使い慣れたアナログな量りを使っていました。そこで、アナログの量りでもしっかりと毎回同じ重さを計量できる様に、針を見る角度を決め、石本が抜き打ちで何個かのパンの重さを量り、何度も注意する様に促しました。
結果、大きなパンで安定的に85個以上/袋、小さなパンで128個以上/袋(以前は120個前後)と生産料が改善・安定する様になりました。

 

収益化が進み、8月は久しぶりに単月黒字化を達成。そして、地主と材料サプライヤーに裁判所に連れて行かれない様に少額ながら負債の返済をし、無事収益の中からスタッフ達の給料を支払う事が出来たのでした。

No.14 TOP Bakery 再生期・前半

ガーナのパン屋の石本です。
前回は約二年間石本不在だったTOP Bakeryの状況のついて書かせて頂きました。
今回は事業再生の前半について書かせて頂きます。

 

ガーナに帰りたいが生活の基盤がなくどうしようかと考えていた時、以前からいつか一緒に仕事をしてみたいと考えていた方からお声掛け頂き、カカオの専門商社の一員として、2018年6月からガーナに駐在させて頂く事となりました。
非常に理解のある上司と同僚に恵まれ、パン屋再生の為の資金の一部を借り入れることが出来、事業再生計画を進めることが可能となりました。

 

事業再生資金を確保できた事をスタッフの皆に報告し、これからは石本を筆頭に再度経営改善をしていく旨を皆に周知し、会計会社にも協力してもらいながら会社として再スタートを切る準備を進める事となりました。

 

そして、月の半分ほどをクマシのパン屋で過ごしながら、借入資金が振り込まれるまでの3ヶ月間、できる限りの経営改革に取り組む事にしました。ここからまた頑張るぞ!という皆の熱意も感じられ、マネージャーも再び信用を取り戻そうと頑張っている様子が伺えました。

 

そんな時、二つの隠された事実が明るみになりました。

 

支払っていたはずの工場の家賃(1年分前払い)が支払われておらず、地主から立ち退きを迫られる事になりました。警察を連れてきたり、裁判所に連れていくと警告書を送りつけられたり、毎日執拗な嫌がらせが続きました。
また、全ての負債を精査したはずなのに、後から30万円ほどの隠された小麦粉サプライヤーへの負債が発覚し、こちらからも裁判所へ訴える旨の通知が送られてきました。

 

全ての負債について、正直に全部話すと約束し、皆で再生計画を作ってきたのに、急に出てきた2つの隠された負債。
マネージャーは「これには言うに言えなかった理由があったんだ、俺はなんとかしようとしたんだ。。。」と言い訳を始めようとした為、マネージャー含め、その事実を知っていた主要メンバー全員に対して怒りをぶちまけてしまいました。

 

「もう一度みんなで頑張ろうと借入までしようとしているのに、こんな信用できないメンバーと仕事なんてできるか!TOP Bakeryなんか潰れちまえ!」

 

怒りが収まらなかった為、スタッフ達から掛かってくる電話も無視し、私が滞在していたホテルに謝罪しにきても会いませんでした。翌日、早朝からマネージャー含む3名が謝罪の為にホテルのフロントにきていました。自分たちの過ちについて、信用を裏切る様な行為に対し、泣きながら謝罪するメンバーに対し、どうする事が正解かわからなくなっていた私は、2つの条件を与える事で1ヶ月間様子を見る事にしました。

 

1つは、マネージャーにはパン屋を一ヶ月離れて、そして、その上で自分がパン屋の為に何ができるのかレポートを上げ、また失った信用(対石本・対スタッフ)をどう取り戻していくのか考える様に伝えました。
もう1つは、残されたメンバーで単月黒字化を達成する事でした。改善できる箇所については既に指摘してあった為、追加資金のない中で自分たちで工夫し、言い訳をせずに努力する様に伝えました。

 

そして、2018年8月、TOP Bakeryの進退をかけた激動の1ヶ月が始まりました。

No.13 TOP Bakery 衰退期 ~撤退or再生~

ガーナのパン屋の石本です。
前回は約1年半に及ぶ遠隔運営により、事業が壊滅的な状況まで悪化していた事についてお話させて頂きました。
今回は2018年1月以降のTOP Bakeryの状況について書かせて頂きます。

 

女性スタッフ達の離職を機に、再度パン屋をどうしていくか真剣に考えました。
まずは、撤退するにしろ、継続・再生させるにしろ、しっかりとパン屋の状況を把握しないと決められないと考え、頻繁にスタッフ達と連絡を取る様にしました。そこから感じられたのは、スタッフ間の不信感と諦めでした。

 

2〜3月には大学生インターンにパン屋に入ってもらい、現場の様子を報告してもらっていたのですが、マネージャー達が如何に経営に無関心で機能していないか、数字がめちゃくちゃか、目を背けたくなる様な現実を突きつけられました。
報告される数字は信頼できるものからは程遠く、ほとんど参考にならない状況でした。また、運転資金(現金)、材料サプライヤーからの買掛金、お客さんへの売掛金などキーとなる数字についてはマネージャーもはぐらかしてばかりで、何度催促しても「大丈夫だ、ちゃんとやっている」と数字を出すのを渋る始末。

 

当時、ルワンダに駐在していたのですが、会社からも日本に帰ってくる様にと辞令が出たタイミングで、これはガーナに帰るしかないと考え、3月頭に帰国したその翌日に会社に辞表を提出し、3月末で退職させてもらいました。それから4月頭に有難くも短期の仕事をもらい、すぐにガーナに渡航してパン屋にも数日滞在することが出来ました。

 

パン屋滞在中、現金・買掛金・売掛金などについて辛抱強く確認していきました。
現金はすでに殆どなく、小麦粉会社からの買掛金は100万円以上に膨らみ、そして売掛金は配達員任せで管理がされていませんでした。

 

「it’s not easy, it’s not easy. It’s not my fault, I tried to do my best」

 

マネージャーは石本不在中にあった様々な出来事について理由を挙げました。

 

– 配達員が売掛金を持ち逃げした。警察に突き出したけどアクラに逃げたのでお金は回収できていない。
– 2017年のクリスマス・シーズンに購入した小麦粉の質が悪く、多くのロスを出したから小麦粉の代金が支払えなかった。
– 材料費が高くなった。マーケットが悪かった。

 

その話の殆どがでっち上げである事は他のスタッフ達からのヒアリングで分かっていました。
普通であれば、即刻クビにして、裁判所に連れていくのが正しいと分かりつつ、自分の中には「まだ自分が戻ってきて、一緒にいれば彼が再起できるかもしれない」という思いがあり、2017年4月の段階ではマネージャーの雇用継続を前提として、事業再生する為に資金集めと再生計画を作ることにしました。

 

2017年の夏にパン屋に戻った際マネージャーと飲みに行き、彼が言った「俺もガーナに生まれていなければ、石本みたいに仕事で海外に行ったりできてたのにな。フェアじゃないよな。」という言葉が頭から離れず、自分が彼の人生をダメにしてしまったのではないかとずっと考え続けてきました。

 

もう一度パン屋に帰ってくるから、彼もスタッフも将来に希望を持てる様なパン屋にしたい、そう強く思う様になりました。
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