いつもどおりが難しい

トーゴに到着した。ありがたいことに、今回はぼくの密着取材でメディアの方も同行してくださっている。これまで1年くらいかけて築いてきたことを見てもらっているのだが、ぼくもトーゴの職人も、すこしソワソワしている。

早速、提携している職人さんとの仕事を取材してもらっているのだが、カメラのまえではエウェ族の人たちも、もちろんぼくも心なしかシュッとしてしまっている。表情や振る舞いがぎこちなくて、これまでその場のノリで物事を進めてきたことが、いかに刹那的だったかを思い知らされた。誰かに見られているなかで、いつもどおりにするのは難しい。

しかしそれは、奇跡ともいうべき時間を彼らと過ごしてきた証ではないかとも思えた。たまたまその時間、そこに居合わせた人たちとの対話のなかで生まれていく生き物のようなアイディアや感性を大切にしてきた。ロジカルに、建設的に組み立てた戦略ではないにしても、なによりここの人たちと一緒にワクワクする時間をつくりあげてきたことを、改めて認識した。

まだまだ事業としては駆け出しで、実績や売り上げも積み上げていかなければならないが、それ以上に、ここの人たちとの充実した時間をこれからもつくっていきたいし、そういう財務諸表にはのらないような価値ある「資産」を増やしていきたいと思う。実際に、そんな資産が今の事業を後押ししてくれているのは間違いない。ぼくたちなら、もっとできる。いろんな景色を見に行くことができる。

セオリーどおりにはならない

 クラウドファンディングの準備を急ピッチで進めてきた。こういうのは最後の追い込みで「何とか間に合いました」というのがセオリーなのに、まさかの出国にギリギリで間に合わない。

11日に関空を出発するのだが、プロジェクトページの公開は12日に確定した。こういう詰めの甘さがぼくらしいし、逆に今までセオリーどおりにいったことのほうが少ないから気にしないことにする。公開日はミスったが、挑戦する内容はみんなで考えたぶん、いい感じに仕上がっている。

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 西アフリカ地域の最高級品とされるエウェ族のケンテ布を、パリコレでも高い評価を受ける京都の職人技で染めた。ケンテ布独自の生地幅を活かして、生産されたままのサイズ感で名刺入れにした。裏地は再生可能素材であるコルク生地を使い、アニマルフリーなものづくりを心がけている。倫理的なサプライチェーンを構築してきたから、新たな課題を生むこともないし、就労や教育の機会を奪われた人たちのサポートにも繋がっていく。先日のアフリカ開発会議のイベントで初めてお披露目したのだが、反応は上々、自信をもってお届けできる。


 今回の渡航は、リリースする名刺入れの素材を仕入れるだけでなく、現地法人のマネジメント、次の商品企画に必要な素材の調達など、やることがてんこ盛りである。ただこの1年で、ぼくのまわりにはたくさんの仲間ができた。日本にもトーゴにも信頼できる人たちがいるから、出来そうなことはあっても、出来そうにないことは思いつかない。だから今回もトラブルは起こるだろうが、あまり不安に思うことはない。ひとつ心配なことがあるとすれば、帰国するまで娘がぼくの顔をちゃんと覚えてくれているかだけである。

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トーゴ仲間の出現

 今日から3日間、横浜でアフリカ開発会議が開催されていて、そのサイドイベントに便乗して、明日からぼくも横浜入りする。来月上旬に公開予定のクラウドファンディング、出国準備、新商品の開発に、行政やシンクタンクへの申請。できることは限られているけれど、やれることは全部やろうとしている。そんなときに彗星の如く現れたのは、ひとりの大学生だった。学び場とびら(京都・四条烏丸から歩いて1分)に来ている立命館大のインターン生で、5分くらい挨拶をしていたら、来月、なぜか一緒にトーゴへ行くことになっていた。

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 なんというか、これまで少ない脳みそをフル稼働させて考えていたのが馬鹿らしくなった。彼は何も考えずにアクションを起こす決断をしていて、とても清々しかった。素性はわからない。でも、なんかいい感じなのである。聞くと、年は22歳で、ぼくが初めてアフリカ大陸へ向かったのと、同じ年だった。


 彼をみていると何年か前の自分みたいで、あのときのほうが決断のスピードは早かったなあと振り返った。翻って今は、せっかくのチャンスが目の前にあるのにウジウジ考えたりしている。もっとシンプルに捉えればいいのに、変に難しく考えたりしている。そうすることで判断軸を確立してきたのはいいが、物事が進むスピードを落としてしまったのではないかと反省した。決断のテンポやリズム感を、ぼくは彼から学ばせてもらった。


 とは言っても、出国まで残りわずかで、彼の準備が間に合うかどうかはわからない。もし間に合わなかったら現地で落ち合うことになるが、ちゃんと合流できるかもわからない。そんな状況は、映画や物語がそうであるように、最後までどうなるかわからないからこそ面白いのだと思う。だから人生も、クライマックスまで楽しめる選択をしたほうがいいのだろうと、彼をみて思った。

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2年連続、2回目。

 来月上旬にアフリカ・トーゴ共和国へ向かうことにした。まだフライトも宿もビザも取っていない。いつになったら計画的に物事が進められるのか、もしかしたら一生このままかもしれないが、飛び出したところで感性を研ぎ澄まして進んでいけたらいいかと、また生ぬるいことを考えている。いま、2年連続2回目のクラウドファンディング挑戦に向けて、必死のパッチで準備中だ。今回は、ひと味ちがうタイプのものをやろうとしている。

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 前回は、まだ何もないなかで、金融機関を退職してトーゴで起業するにあたっての支援型プロジェクトに挑戦した。あれから1年が経って、少しずつではあるが確かに形にしてきたものがあって、現地法人をつくり、弊社しか持っていないオリジナルの素材も開発してきた。今回は、商品購入型のプロジェクトで、Makuake(マクアケ)というサイトから発表する。審査がいろいろ残っていて、まだリリースできる段階ではないし、出国に間に合うのかも微妙なところだが、ベストを尽くしまくっている。


 ありがたいことに、いろんな人が手伝ってくれている。ぼくはやれることは何でもやるタイプではあるが、やれないことが多すぎて結構すぐに行き詰まる。そういうときは他力本願で誰かに助けてもらうしかない。人が人を繋いでくれて、ぼくとは初対面なのに、いろんな無茶ぶりに応えてくれて、鬼のスピードでサンプルをあげてくれる方とも出会うことができた。そうして、またしても売りたくないくらい愛着のある商品ができあがった。

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 現場の声を形にして、名刺入れをつくることになった。ぼくが考えることはだいたい間違っているから、お客さんに考えてもらった。三人寄れば文殊の知恵とは言ったもので、10人くらいに集まってもらって考えたから、文殊どころではないものになっている。これまでは誰が商品を手に取ってくれるかわからなかったが、もうすでに、何人かのお客さんに届けることが決まっている。先にお客さんがいる状態で生産に入れるのは、事業として、すこしだけ前進できたのではないかと思う。


 一歩一歩、前へ。すこし前進できたことを、半歩でも先へ。ただ、このままのペースでは間に合わない。時間は有限だ。限られた時間をどう生きるか、最近はそんなことも考えたりしている。

ダニエラの朝

トーゴの平均年齢は、なんと19歳。日本が45歳くらいだから、かなり若い。ここで過ごしていると、ダニエラくらいの子がかなり多いことに気づく。

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ダニエラは早起きして掃除をする。ママに頭を巻いてもらって、気合いを入れるのだ。朝日に照らされて、いい感じである。

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ダニエラは言う。「ちゃんと掃除しないと朝ごはん抜くよ!」きれいに掃いてくれているから、ゴミひとつ落ちてないのだけれど。



いいチームへ

 4月に日本に帰国してから、自分なりに動いて考えた結果として、6月からポケットチーフの販売を開始。およそ3週間で、ほぼ完売した。この1ヶ月は、たくさんのお客さんにフィードバックをもらうなどして、次なるステージへとステップアップできるように動いてきた。そして来月にまた、トーゴへ行く。日本で、たくさんのお客さんに商品を届けてきたことを、トーゴの職人たちに報告してくる。


 現地では格式が高いとされる素材を調達してきた。お金をつめば手に入るものではない。相手は論理では動かない人たちで、そういう人たちと手を携えて前に進もうとするとき、大切なのは、合理性よりも倫理観であったりする。彼らの手仕事へのリスペクト。それはある意味で、愛するということなのかもしれない。


 たとえば、妻や娘と生活していて、彼女たちを利用してビッグビジネスをつくりあげたいとは思わない。どうやって幸せな人生を歩んでいこうか、どんな生活であればハッピーであるかと考えることはあっても、損得勘定で判断することはない。そのような感じで、彼らと一緒に仕事をとおした生活を築いていこうと思うと、家族のように受け入れてもらうことが第一義的に重要になってくる。突如として現れた日本人(それは潜在的に敵である)を仲間に迎え入れてもらうためには、あなたの仕事によって、日本でどのようなことが起こりつつあるかということを伝えなければならない。


 だからぼくは何度でもトーゴへ行く。現地の人と面白いことをするためには、チームビルディングが何より大切だと思っている。いいチームにさえなれれば、ジャイアントキリングを起こすことができる。これまで見たことない景色を望むことができる。もっともっと、幸せになれる。

ものづくりの難しさ

 前職を辞めてから1年を費やして、一つ一つ確認しながら、自分なりに考えて決断を重ねてきた。だからどのシーンを切り取られても、恥ずかしくないプロセスを踏んできたつもりでいる。少し時間はかかってしまったものの、ゼロから進めてきて、企画・製造・販売までをひと通り体験することができた。これからまた、新たなものづくりの企画を進めているのだが、改めてその難しさを痛感している。というのは、事業の進め方と、いま対峙しているものづくりは、ほとんど真逆のアプローチをしているのだ。


 ぼくの事業は、たとえば性別や障害の有無をこえて、みんなが笑って過ごせる世界をつくりたいと思っている。これはいわゆるバックキャスティング的に、つくりたい未来からの逆算で物事を進めている。しかしいま対峙しているものづくりは、目の前にあるアフリカ布から最終の形を模索していく、いわゆるフォアキャスティング的に進めている。そういう意味で思考回路をスイッチしていかないといけないから、とても難しい。ものづくりを進めていると、マーケティングやブランディングの領域に踏み込まざるを得ないのだが、これがまた死ぬほど難しい。


 大阪のメンズ館や巷のセレクトショップに通い、市場に出回っているものを分析するなかで、これまで見落としていたことに気づいたり、作り手の工夫を垣間見たりしている。これまで調べてきたことを見返して、調べ足りないことに絶望したりしながら、また机に向かったりもしている。そしてサンプルを作り、修正を加えて、また街に出る。最近はそんなことを繰り返していて、前進しているのか後退しているのかよくわからない状態が続いている。しかしそういうときこそ、事業としても、自分としても、ワンアップしていると信じて、前を向きたいと思っている。

京都精華大学×アフリカドッグス

 先日、京都精華大学でおこなわれたオープンキャンパスでは、一風変わったコーナーが催されていた。「トーゴ展」と称して、トーゴ共和国をモチーフにした作品や「SDGs(Sustainable Development Goals, 持続可能な開発目標)」をテーマにした作品の展示会が開催されていた。今学期、田村教授の強力なサポートのもと、厚かましくもトーゴを切り口にした講義をさせていただいた。その期末の成果報告として、学生たちの作品をいろんな人に見てもらう機会をセッティングしていただく運びとなったのだ。トーゴ展では、弊社が取り扱う布を製品化したものだけでなく、トーゴをテーマにした絵画や絵本、マンガ、映像、音楽、さらには料理まで、多岐にわたる作品の完成をみた。

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 初めての挑戦は、不安も大きいが、それを乗り越えると喜びも大きい。今回の試みも、いい意味で予想を裏切られる結果になった。そして自戒も込めて、学んだことを残したいと思った。学生たちは、トーゴという馴染みのない国について思いを馳せて光を当ててくれた。そこに垣間見たのは、想像することの大切さであった。

 講義中、あるいは講義後に学生からたくさん質問をもらった。自分の体験とすり合わせて、遠く離れたエピソードを自分事として捉えようとする学生たちの姿勢に、ぼくは出来る限り応えたいと思った。そういう連鎖が、新たな可能性を広げると思うし、知らないを知るに変換しようとする努力が、今の自分よりも少し成長できるきっかけになると思っている。だから大使館とビデオ電話で繋いだり、東京のトーゴレストラン経由で食材を調達したりして、考えられる範囲でやれることは全部やった。どこまで伝えられたかはわからないが、成果として出てきた学生たちの作品は、どれもトーゴの息吹を感じられるものになっていた。
 そうしてよくわからないことを想像して自分の立場を表現するのは、人生においてとても大切なのではないかと思っている。ぼくらは根本的に違う。同じ日本人でも、生まれた環境や出会った人たちによって、生き方や考え方がまるで違う。そのような中で、なにか物事を進めたり、互いに納得するポイントを探り合って、生きていったりする。そういう意味で、想像することは大切であるし、お互いにそうすることができたなら、この世界はもう少しだけ優しくなれるのだろうと思う。そんなことを学生から学ぶことができた。

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ものづくりの難しさ

先月末にポップアップイベントを終えて、ゼロからものづくりを進めてきて、企画・製造・販売までをひと通り体験することができた。ここまでに前職を辞めてから1年を費やしたが、一つ一つ確認しながら、納得するプロセスを踏んできた。これからまた、新たなものづくりの企画を進めているのだが、改めてその難しさを痛感している。

というのは、事業の進め方と、いま対峙しているものづくりは、ほとんど真逆のアプローチをしている。ぼくの事業は、たとえば性別や障害の有無を超えて、みんなが笑って過ごせる世界をつくりたいと思っている。これはいわゆるバックキャスティング的に、つくりたい未来からの逆算で事業を進めている。しかしいま対峙しているものづくりは、目の前にあるアフリカ布から最終の完成形を目指す、いわゆるフォアキャスティング的に進めている。だから思考回路をスイッチして、脳みそを入れ替えていかないといけないから、とても難しい。

ものづくりを進めていると、マーケティングやブランディングの領域に踏み込まざるを得ないのだが、これがまた死ぬほど難しい。いまいろんな人の手を借りているが、専門的な知識を必要とするところが多くて奥が深い。そういう意味で、これまで触れたことのないことに挑戦するのは大変ではあるが、楽しくもある。サンプルを作って、そこから修正を加えるのに大阪のメンズ館に足繁く通い、市場に出回っているものを分析したりして、これまで見落としていたことに気づいたり、作り手の工夫を垣間見たりして、めちゃくちゃ勉強になる。

この1ヶ月はそんなことを繰り返していて、頭がおかしくなりそうなのだが、そういうときこそワンアップしていると信じたいと思う。

感情コミュニケーション

トーゴの公用語はフランス語で、ぼくたちが現地法人を置くパリメ地域においては現地語であるエウェ語が話される。人前で話す機会があると、言語の問題はどのように解決しているのか、という質問をよく頂戴する。

もちろんぼくは、フランス語もエウェ語もほとんど話すことができない。しかし現地法人のマネジメント、商品の仕入れ、会社の設立を果たすことができた。なにかプロジェクトを遂行するのに、言語スキルも大切だとは思うが、それ以上に地域の人たちとの関係をいかに築くかということのほうが、ぼくにとっては重要だ。

ぼくらは、同じ日本語を話しているのに分かり合えないことが、けっこうある。腹の探り合いをしたり、本音と建前があったり、とくに京都では独特の行間を読む習慣があったりするから、日本人とコミュニケーションを取ることのほうが、場合によっては難しいことだってある。

ところがトーゴでは、そんな遠回りなコミュニケーションはなくて、感情をぶつけ合うシンプルなコミュニケーションが主流に思われる。だから思いのほか言語が課題になることは少なかった。これからどんな展開になるかはわからないが、お互いの信頼関係だけは崩さないようにしたい。その関係さえあれば、分かり合えないことから、お互いの認識の違いをすり合わせることができると思っている。

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