点と点が線になるとき

商品サンプルが完成して、撮影も終えた。いま、このアナログなぼくがパソコンをポチポチしてホームページをつくっている。謎のバグ(か、操作の不手際)を繰り返して、もうすぐ公開できそうなところまできた。そんなことをしながら、いろんな人にお話したり、商品に興味をもって頂いた方と商談する日々を過ごしている。もうすこしで、また一歩、進めそうな気がしている。

 人の縁というのは不思議だ。株式会社夢びと・代表の中田さんの粋な計らいから、ヤバい会社の営業部長と商談する機会も得た。結論から言えば、SDGs(Sustainable Development Goals, 持続的な開発目標)へのアクションとして、ぼくたちの商品を活用してもらえるよう社長に話をあげてもらうことになった。でもぼくは、変なことを書いてしまうかもしれないが、この商談の結果がどうなろうとも成功だと思っている。それくらいにシビれる体験をした。

 今から2ヶ月前、ぼくはフランスで営業活動に邁進していた。そこでいくつかのブランドとブティックからオファーをいただいたのだが、売上代金が入る直前で商談をすべてキャンセルした。最終販売価格が高すぎて、少なくともぼくのまわりの人たちには手が届かない商品になっていたのだ。ぼくは身近な人の、身近なものになりたかったのだと、そのとき初めて気づいた。だからこそ、いまハンカチーフで勝負しようとしている。

 そんなことを経て、商談に臨んでいた。部長に商品をお見せすると、「キミみたいな人に出会えて嬉しい」と固く手を握られた。ぼくは目の前の人に喜んでもらえることが、こんなに尊いことだと知らなかった。ここまで一緒につくりあげてきた人たちの顔とか、アフリカの炎天下で土を掘り続けたシーンとか、職人に何度も交渉に向かった道のりとかがフラッシュバックしてきて、喫茶店で涙が止まらなくなった。悲しくないのに涙が出たのは久しぶりだった。


 そんな体験をして、ぼくはこれからも鳥肌が立つほうを選びたいと思った。フランスの有名ブランドと一緒に仕事ができる喜びよりも、目の前の人にしっかり届けられる喜びのほうが大きい。そういうやり方で、どのようにして事業を前に進められるかを考えたいと思えた。商談はいつのまにか人生の話になって、最近ぼくが父親になったこととか、部長にはぼくと同じくらいの息子さんがいることとか、そんな話をした。そしてぼくらは、いい未来を残したいと強く願う仲間になった。点と点が線になるときは、こんな感じなのかもしれない。

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みんなで、前へ


ロメの夕日

生活がシンプルだからこそ、夕日の綺麗さが映えるのかもしれない。こうしてずっとボンヤリ見ている時間は、いつでもつくれていいはずなのに、なぜかできなかったりする。毎日が忙しなく過ぎていって、いつしか空を見上げることもしなくなった。
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鳥が飛ぶ音、女性が笑う声、バイクのクラクション。風がとおって海のにおいがした。

大学は自由であってこそ

 まさか、こんなぼくが再び大学の教壇に立つとは思わなかった。「再び」というのは、母校の滋賀大学で、SA(Study Assistant)として簿記会計の授業を担当していたことがある。ぼくなりに趣向を凝らして好き勝手にやらせてもらったのだが、その癖がなおっていないようだ。社会人になった今は、学生のとき以上にやりたい放題である。でも大学という場所は、自由であってこそだ。

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↑火災警報器の下でトーゴ料理をつくる※ちゃんと許可とってます

 今の時代は便利で、スマホさえあればいろんな人と繋がれる。トーゴ大使館とテレビ電話でコンタクトをとり、かれこれ7年ぐらいお世話になっているジュルスさんに、超多忙のなか特別出演してもらった。トーゴという日本から14,000kmくらい離れていて、しかもほとんど情報がない地域に思いを馳せるのは至難の業だ。ぼくが持って帰ってきたブツ切りのシーンを伝えるだけでは不十分で、もっとタンジブルなものとして伝えたいと思った。そしてお得意の他力本願で、ジュルスさんにお話してもらう運びとなったのであった。
 ジュルスさんは大人気で、一瞬で学生たちの心を掴んでいた。授業後のショートレポートをみても、これまで一生懸命プレゼンテーションをしてきたのは何だったのかと思うくらいに響いていた。遠いところのことを知るのに、そこの人と話すことや、そこの人と友だちになること以上に有効な方法はないと思った。友だちになったら、その人のことをもっと知りたいし、喜びとか痛みも含めて分かち合いたいとも思う。最近は商品リリースにあたってのもろもろの準備などで死にそうになっていたが、こうした仕事以前の人との関わりのなかで、改めて気づくことを大切にしていきたいと思った。

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↑いかにもいろんな人の心を掴みそうなジュルスさん

商品撮影

 商品リリースのタイミングを7月に決めて、急ピッチで準備を進めている。これから詰めないといけないことが山のようにあるのだが、やると決めてしまったほうが、いろいろ確認できるからいい。失敗なんてない。うまくいかなくても、それはうまくいかないことを確認できた成功だと思えば、それでいい。自分で自分を奮い立たせないと、不安で押しつぶされそうだ。


 こないだの土日は東京出張だった。いまは夜行バスより飛行機のほうが日によっては安い時代で、今回は格安航空を利用した。毎月のように関空へ行き、一番デカいサイズのスーツケースでチェックインして、受付の人に国際便と間違えられながら成田空港へ向かった。これまでいろんな空港に行ってきたが、成田空港は少しわかりづらい。都心へいくのも一苦労で、海外の人ならなおさら難しいだろうなと思った。

 昼間に出発したのに、ほとんど日をまたぎそうな時間帯に到着して、今度はハイボールで自分を奮い立たせながら、明け方まで相棒と打ち合わせをした。そして翌日には、商品撮影に入った。こんなぼくたちのために、5時間以上をかけて、ヤバいスタジオで、ヤバい人たちに、数々のヤバい写真を撮ってもらった。そこでぼくたちはプロの技をまざまざと見せつけられて、自分たちの未熟さを知ることになった。ぼくたちはもっと仕事に真摯に向き合わなければならない。気を引き締めなおした。

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 今回、ぼくたちはハンカチーフをメインにラインナップを考えている。この撮影に協力してもらったクリエイターは、昨年からぼくたちのプロジェクトを知ってくれている。彼は撮影前の打ち合わせでも、撮影後のお酒の席でも、ハンカチーフに留まるのはもったいないと言ってくれた。ここまでやってきたことに対して、同じ気持ちでいてくれたことがめちゃくちゃ嬉しかった。次はもっとバージョンアップしていたいし、そしてそれを、また彼に見せたい。

 そんな少しアツい感じになっていたら、飛行機を逃してしまって夜行バスで帰ることになった。メールを見ると、ありがたいことに商品の問い合わせが何件か入っていた。ぼくたちがラインナップするのは、ただのハンカチーフではない。少しだけ、でも確実に、いい方向へと世界が動き出すハンカチーフだ。つぎのステップに向けて、まずはこのハンカチーフで勝負する。


営業開始

商品サンプルができて、できるだけいろんな人に見てもらい、最後の調整をしている。ありがたいことに、いろんなところでお話をする機会を頂いていて、ハートフルなアドバイスをたくさん受け取っている。

近年のSDGsへの関心の高まりは目を見張るものがある。ぼくの周りではかなり認知度も高くなってきていて、近所で勉強会が開催されたりもしている。そしてその勉強会を主催されている方からオファーがあった。そこで気づいたことは、SDGsには関心はあるし、なにか行動をしたいと思っている人も一定数いるけれど、なにをしたらいいかわからない人が結構いることだ。

そんな人たちや企業の担当者の方々をまえにお話したところ、弊社の商品をノベリティで使って頂けることになった。ぼくたちの商品は、直接的に学校へいけない女性たちのサポートに繋がるし、京都の途絶えゆく技術をアーカイブする役割があったりする。それ以前に、自分で言うのもあれだが、もの自体がイカしている(と思っている)から上々の反応だ。

今年7月にローンチする。それまでにできるだけ多くの人たちに伝えたいと思っている。いろんな人の気持ちをのせてここまできた。まだまだやれる。

商品サンプル完成

世間がゴールデンウィークのあいだ、ぼくはひたすら布を裁断していた。妻にも手伝ってもらいながら、何種類かの商品サンプルが完成した。これをいろんなところに持って行って、またいろんな人にアドバイスを頂戴しながら営業をしようと思っている。今週には商品撮影をする。7月のリリースまで時間がない。

インターネットですべてが繋がっていく時代にあって、ぼくたちは手作業でアフリカと日本を繋ごうとしている。アフリカ・トーゴ共和国を中心に住まうエウェ族の手織りの布や手染めの布、京都の職人による伝統技術。とくに根拠はないが、手づくりの料理が美味しいように、手作業の代物には魂が宿ると思う。機能やデザインは、他社のもののほうが優れているかもしれない。しかし弊社の商品には、職人たちの息吹を感じることができるオーラがある。長年のあいだ蓄積されてきた文化や技術は、だれも否定することはできない。ぼくたちはそこに価値を感じているし、信じているのだ。

バオバブの木

 バオバブの木には、とてもおいしい実がなる。バオバブのジュースやアイスを味わいながら、地平線に沈む夕日をみるのは格別だったりする。
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この木を待ち合わせ場所にする人がいる。この木のまわりで遊ぶ子どもたちがいて、木陰で休む人がいる。
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みんなが集まるバオバブの木、温かさを感じたりする。

マチ針と裁ちバサミに向き合う

 7月の商品リリースに向けた闘いが始まった。マチ針と裁ちバサミを手に、アフリカ・トーゴ共和国から仕入れてきた布や、京都の職人と開発した布と対峙している。手に謎のマメができて、指先は穴だらけである。水仕事のたびに激痛が走る。自分が不器用すぎて涙が出そうだ。

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まさか、再び裁縫セットを手にすることになるとは思わなかった。人生は何が起こるかわからない。だから何が役に立って、何が役に立たないかというのは、最後までわからない。マジメに家庭科の授業を受けていてよかった。手はボロボロだが、なんとか食らいついている。
 裁断しながら、これまでの旅路を振り返ったりできるからいい。6年ぶりに戻ったアフリカ大陸は、もちろん劇的に変化していて、でも変わらないものもあったりして、その変わらないものに光をあてたくて、再びアフリカ大陸へ向かった。道のりの途中、自分たちの限界を知ったり、立ち止まったり、不安に胸が締め付けられる夜を何度か過ごしたりした。まだまだ出来ることはあると思う。でもこれが、今の自分たちのベストだと胸を張って言える。
 もしこれで無理だったら、ということを考えたりもする。でもこの不確実性の時代において、将来のことを憂いても仕方がない。事実を積み重ねる。できれば、目に見える形で。いつか、やってきたことに背中を押される日がくると思っている。

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商品リリースに向けて

金融機関を退職して9ヶ月くらいが過ぎて、当初の事業計画から大幅な変更や修正をしながら、でも目指す方向性はブレずにここまできた。

そしてようやく、広くお客さんにリリースする商品を確定した。ぼくたちは、ハンカチーフから良い世界をつくることにする。

創業してからのほとんどの時間を、服づくりに費やしてきた。そして少ない脳みそをフル稼働させて辿り着いた「作務衣」という服を、フランス・パリで発表してきた。そこで気づいたことがあった。服づくりは、かなりの工程を経るぶん、最終価格は予想以上に高くなり、これまで応援してきてくれた人には届かない商品になってしまうのだ。

出口戦略を再考する必要に迫られた。誰に、何を、どのように届けるか。ぼくの挑戦は、クラウドファンディングからスタートした。その最初の挑戦をもう一度、振り返って、どのような人に応援してもらってここまで来れたかということを見つめ直してみた。その人たちに引き続き応援してもらえるモノを、ぼくたちなりに塾考した結果、飲み会に行くぐらいの値段で、いい世界に繋がるプロダクトを届けられないかと思った。

そしてなにより、応援してくれる人たちの身近なものになりたかった。仕事をしているときも、休日も、その人の近くにあって、ぼくたちのプロジェクトを感じてもらえるもの。行き着いた答えは、ハンカチーフだった。

エウェ族の生地に京都の職人技を織り込んだハンカチと、エウェ族による伝統的な染物でつくるポケットチーフ。ポケットチーフは、ビジネスシーンでも用いることができるから、前職でお世話になった人たちにも是非とも使ってもらいたいと思えた。

今年7月にリリースする。あと3ヶ月、必死に準備してベストな形でお届けする。ぼくたちは、ハンカチーフで世界を変えることにした。

学生と、SDGs

今学期、京都精華大学でSDGsをテーマにした講義で複数コマにわたって講師を担当することになった。

同大学のウスビ・サコ学長は、日本で初めてのアフリカ系出身(マリ共和国)の学長である。学術の世界では、アフリカといえば人類学や開発経済学のフィールドになることが多いが、サコ先生は別の視点(たとえば、アートやデザイン、ビジネスなど)から現代アフリカの可能性を探る試みをされている。

また、京都精華大学ではSDGsを中心に据えたカリキュラムの構築にも精力的であり、今回は現代アフリカの可能性について、SDGsを切り口に学生とともに考える機会を頂戴した。

トーゴから帰国して3日後に初回の講義があって、ほとんど寝ずに授業の準備に追われることになったが、希望に溢れる学生をまえにすると疲れが吹っ飛んだ。トーゴ共和国から直輸入したオーガニックのチョコレートとビサップティーを楽しみながら、仕入れたてホヤホヤの情報をお届けした。

講義終了後、学生たちとの対話が2時間くらい続いて、学食でチキン南蛮を食べながら、みんなでいい未来を想像したりした。今後の講義では、どのような角度からトーゴ共和国に光をあてるかということを話し合うことになるが、学生からのアイディアをできるだけ形にしていきたいと思っている。

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