ルワンダでタイ料理屋3 本場の味への道のり:前編
前回は顧客は誰か、ということを書きました。今回は、その顧客に提供する価値は何か?についてです。
顧客=外国人が今他の何かに使っているお金を、どううちに使っていただけるか、です。
それをルワンダ国内の日常消費領域で使ってもらいたいと考えたとき、
外国人(特に欧米人)が好きなタイ料理屋が一軒もないではないか!
ということでジャンルは決定。

タイ最高
どこからどうひっくり返すか?
やっぱり飲食店をやるからには「味」で勝負か?
ただこのマーケット、
「ここのタイ料理は宮廷料理を基調としながら、イサン地方のメニューも取り入れ、・・・(中略)・・・、ここのカレーはスパイスの調合とココナッツミルクの配合が独特で他にはないコクがたまらんのですよね!!」
という観点で当店を選ばれる方、当面はきっとルワンダに住んでいる人口の0.0001%(12人)もいません。
だって他にタイ料理屋ないですし。
改めて整理すると、

って全然見えなくてすみません。「『タイ料理』というだけで新たな価値提供になるがリピーター獲得に一定の味は必要条件」ということを書いています
ということで、「タイ料理」という新たなジャンルを提供し、一定の味を担保したあとは、サービス面(早さ、便利さ、居心地の良さ、おもてなし)の磨きこみを優先させるべきと考えています。それぞれはまた別途詳述。
ちなみに、さっきから何度も「唯一のタイ料理屋」と繰り返してきましたが、実は、奇しくも同時期に、同じキガリ内にタイ料理屋がオープンしていたのです!
それもタイ人オーナー。
噂を聞いて速攻食べに行きましたが、美味しい。本場や。でもなぜうちの3倍の価格!?
そのお店は今年5月に閉店しました。
プライシングが原因だったのでしょうか。
ここはひとつ言わせていただきますよ、タイ人のタイ料理屋に勝った、と。

確かに立地と内装は初期投資がかかっていそうでした
そしてもう一つ細かい補足をすると、タイ料理屋はかくしてうちだけですが、アジアンフュージョンレストランは以前からあります。グリーンカレー、パッタイ、あります。
が、ここもひとつ言わせていただきますよ。あれはグリーンカレーではない、と。
でもそれまではキガリで唯一のグリーンカレーだったので、お客さんは「グリーンカレーってこんな感じなんだ」と思ってしまっていたかもしれません。あれは緑色のシチューですね。ブロッコリーたくさん入ってるし。そしてパッタイはなぜかものすごく朱色です。

ココナッツとは違うクリーム感
そう、唯一ということは、「これがタイ料理です」と言ったもん勝ち的な荒業もできなくはないです。
が、やはり各国料理が一般家庭の食卓に並ぶという稀有かつハイレベルな食通国家、日本、その国の一員としては、そんなことはしたくありません。
家庭の食卓に、普通のおかんがラザニアも出せればビビンパも出せて休日は軽くパスタか親子丼、変わり種ではナシゴレン、気合入れればパエリアもボルシチも作れるし炒飯ギョーザなんぞ朝飯前ぇ!なんて国は日本だけです。
やるからには、偽物ではなく、本場に近い、美味しいものを提供したいのです!
それに実際問題、この小さなマーケットではご新規さん獲得よりもリピーター確保がとても重要になってきます。美味しくなかったらまた来ていただけませんよね。
それをどう実現したか。今回はその前編、レシピができるまで、です。
まず、手に入る食材からメニューを選定。(経緯はこちら 陸の孤島の物流編)
そこからインターネットや各種料理本、出国前に習ったタイ料理教室でのメモなどとにらめっこしながら、まだ施工が終わらないので家のキッチンで毎日毎日タイ料理を作る日々が始まったのです。
一番苦労したのはカレー。カレーペーストです。
各種スパイスを調合し、フードプロセッサーで混ぜ、ペースト状にする。
が。グリーンカレーが何度やっても赤にしかならない。
やればやるほど味が分からなくなってきます。
タイ料理でカレー出さないって、やっぱりなしだよねぇ・・・?なーんて。
激辛で苦いだけのグリーンカレーを毎晩毎晩食べさせられていた息子からのアドバイスは
「ママ、もっと美味しいのにしたら?」チーン

全然グリーンじゃないグリーンカレー
そんな私に同居人のとある女性(ちなみにこのお方、私ってなんて枠にはまりきった退屈な人間なんだと思わされるような大胆さをもつ一方で、仕事の進め方はポイントを外さず何事も即決、200人のルワンダ人部下を統率するすごい女性)から一言。
「とりあえずタイ行ってきたら?今週末。」
というわけで息子を姉さんに託して一路バンコクへ。
1時間のトランジット1回のみの片道合計14時間って、超近い!(アフリカに来るとこんな感覚になれます)
タイレストランとタイ料理教室を2泊4日で回りまくる。

ルワンダになくとも、なんのハーブがどう機能しているかを知ることは大切
いろいろ収穫がありました。
タイの高級店から露店までいろいろ食べて味を思い出し、
(というわけで、年に数度はバンコク、東京、近場ではナイロビでタイ料理を食べることをルーチンに)
現地の人に、食材買い付けに適した卸売スーパーや、ローカルマーケットをおしえてもらったり、
白人の観光客が多く参加するタイ料理教室では、欧米人の好みの味を探ることもできました。
そしてどうやらペーストづくりでは、スパイスを炒る時間が長すぎたことが判明。
グリーンカレーが赤くなってしまう現象は、えびペーストのブランドを変更して解決。
「グリーンカレーがどうしても赤くなってしまうのですが」と
日本で知り合ったタイ料理家の方に、大真面目に相談していた私。
先生もさぞかし心配されたことかとおもいます。
「このアフリカの子大丈夫かしら・・・」と。
そんな感じでどのメニューも何度も何度もアップデートを重ね、レシピを作っていきました。
さてそれを次はスタッフへトレーニング。
これがまたとんでもなく大変なのですが、それはまた別のお話…