タウンシップ~世界一格差が大きい国、南アフリカ~

●GDPは大きくも格差が最も大きい南アフリカ

前回の記事では南アフリカのケープタウンが如何に観光都市として観光客を惹きつけているかということを書きました。ウォーターフロントと呼ばれるエリアには巨大な観覧車があり、高級ブランドが名を連ねます。南アフリカのGDPは3000億ドルを超え、世界で31位に位置するまでになっています。

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ウォーターフロントの様子

ただし一人当たりのGDP(GDP per capita)を見てみると、統計基によって違いはありますが5000ドル後半~6000ドル前半となり(ランキングも80~90位台)決して裕福とは言えません。この一人当たりGDPとは国の経済規模であるGDPを国民の数で割ったもので、ざっくりいうと一人一人の経済活動の大きさ、つまり富裕度合ということが出来ます。

さらに悪いことに、南アフリカのジニ係数は統計にとり違いはありますが、0.660 から 0.696となり、世界で最も格差が大きい国であると言われています。ジニ係数とは格差を表す指標で、0に近いほど格差が小さく、1に近いほど格差が大きいということになります。ちなみに日本は0.3前半代であり格差が小さい国の1つになります。

 

●その格差社会を顕著に表すタウンシップ

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タウンシップの様子

南アフリカの格差の大きさを表す象徴的なものがタウンシップではないか、と考えます。タウンシップとは一言で表すと「スラム」のようなイメージに近い居住区になります。アパルトヘイト時代、非白人(黒人、混血、インド人)層は差別され、経済的にも道徳的にも様々な酷い扱いを受けました。その1つの政策として1950年に施行されたGroup Areas Actという法律がありました。人種ごとに住む場所を決め、強制的に移住させたのです。都市部など立地の良い土地は白人に独占され、郊外の狭い土地に非白人層は押しこめられたのです。この居住区をタウンシップと言います。1994年のアパルトヘイト終焉後はこの法律はなくなりましたが、今現在もアパルトヘイト時代の名残、というか慣性のまま低所得者層がタウンシップに住み続けています。そして非合法に家(木材やシートで作った小屋のようなもの)を立てたりして、タウンシップは膨らみ続けています。タウンシップの中にも様々な格差はあります。とても立派な家で高級車に乗っている人もいれば、その日暮らしで困窮している人もいます。ソウェトと呼ばれるネルソン・マンデラの旧家もあるタウンシップは100万人を越える大規模なものになります。インドのダラヴィーやケニアのキベラスラムにもひけをとらない大きさになります。

このタウンシップの居住問題を解決しようと政府は全ての人に家を与えるという政策を推進していますが、今のところはある一定の効果しか治めておらず、非合法な居住区、タウンシップの問題はいまだ解決までは程遠いと言えます。元々がアパルトヘイト時代に強制的に押しこめただけに、非合法で居住しているからといって、タウンシップの住人に無理やり政策を押し付けることも出来ません。

この社会格差が治安の悪化や、ストの多発、暴動の発生などに繋がり社会を不安定にしているということが言えます。

●汚職とも結びつくタウンシップ政策

 

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タウンシップのトイレ

またタウンシップ問題の改善が上手く行かない1つの理由は汚職が絡んでいるからであるとも言えます。上記の写真はタウンシップに設置されているトイレです。家々にはトイレがないので周りの住人が共同で使用します。実はこのトイレの月の維持費が1400ランドを越えるというのです。日本円にすると約1万円です。清掃作業などを考えると維持費がかかるのも理解できますが、1つのトイレに対して1万円の維持費は南アフリカの給与水準を考慮するととても高いと言えます。話を聞くと地元に住んでいる人はこの事実を知っていて、憤慨もしているようです。そういった不満が募り、先の地方選挙における与党ANCの大敗につながったようです。

●まとめ

南アフリカを含めアフリカ各国では途上国では経済発展がさかんに叫ばれていますが、単に発展をするだけではなくて如何に格差を解消するかという視点もとても大切です。単純な援助や汚職と絡んだ政策では富裕層がもっと富裕になり、貧困層はもっと貧困になることも考えられます。平均が伸びていたからと言ってそれは即ち良いことであるとは言えません。多角的な数字、歴史的な文脈などから複眼的に問題を捉える必要があると言えそうです。