思いつくビジネスアイデアの大半は間違っている- Lean Startup
Lean Startupという言葉は起業を志している人であれば大体耳にしたことがあると思います。Leanとは英語で「引き締まった」とか「脂肪がない」等を意味する形容詞で(傾く、寄りかかるという意味もあるがそっちではない)、Lean Startupは直訳すれば「引き締まったスタートアップ」ということになります。
取締役以下全員が体脂肪率2%、顧客も10%以下でないと会員にはなれない。社内ランチは常に鳥ささみ一本勝負。給湯室には常にZAVAS PROが鎮座しており、最適なタイミングでの動物性たんぱく質補給が可能。業務時間中もしっかり筋肉に負荷をかけられるよう、社内の全てのドアは10トン以上の荷重をかけないと開かないようになっている、そう、ゾルディック家の試しの門のように・・・
というわけではなく、作業の無駄を極力なくそう、という意味でLeanと言っています。ここで言う無駄とは、「世の中が求めていないものを作ること」になります。作ってみたはいいけど誰も使わない、使ってくれるけど誰もお金を払わない、お金を払ってくれるけどたくさん作れない、そんな商品を作るのははなから無駄ということになります。だから、そんなことはしたくない。
しかし、人間はどうしても自分のアイデアを愛したいし、考えを否定されたくない。また、思い切りが大事とか、やってみないとか分からないという精神論も一理あるから、まず商品を作るところに命をかけてしまう。
でも、本当はいかなるアイデアも、全ては検証をしてみなければ正しいとは言えないのです。たとえそれが専門家の言葉だろうが、具体的な・客観的な検証を得ないアイデアが正しいかは、だれにも分からない。そういう生煮えのアイデアのまま商品開発まで突き進んで、いざ商売をしようとすると上手く売れない、売れてるけど増産が出来ない・・・等となって大失敗。
ということに警鐘をならし、具体的な対処法を示したのLean Startupという手法です。
尚、詳しい方法論はハーバードビジネススクールのケーススタディ”Hypothesis Driven Startup”に書かれています。
https://services.hbsp.harvard.edu/services/proxy/content/60498278/60498280/f6cc58ac7626aba05fc9512df647fb09
私の理解する限り、具体的に以下のプロセスを踏みます。
①そのビジネスが成立するのに必要な仮説を全て整理する
②全ての仮説に対して、顧客インタビューによって検証を行う
③検証を通過した仮説は、Paper Prototype(紙芝居で製品やソフトウェアを表現したもの)やWire frame(みかけ上だけ動くソフトウェア)でさらに検証
④それも通過した仮説は、最小限のコストと時間をかけて作ったプロダクト(Minimum Viable Product)を実際に使ってもらうことで最終検証する
⑤途中で得られた検証結果を踏まえて、何度も修正していく
具体的なアイデアで考えてみると以下のような感じでしょうか?
①そのビジネスが成立するのに必要な仮説を全て整理する
ー 海外の会議に参加する学者は、滞在先でホテルが取りづらいことに辟易している
ー 都市部に住む中所得層は、自分の家の空いてる部屋をどうにかしてお金にしたいと思っている
etc…
②全ての仮説に対して、顧客インタビューによって検証を行う
ー 海外の会議に参加したことのある学者数十人に「ホテルが取れなくて苦労したことはあるか?」
ー 都市部に住む中所得層数十人に「空いている部屋を活用したことはあるか?」「どう使いたいか?」
③検証を通過した仮説は、Paper Prototype(紙芝居で製品やソフトウェアを表現したもの)やWire frame(みかけ上だけ動くソフトウェア)でさらに検証
ー 民間人の家に泊まれるサービス、を表現した紙芝居を見せてアイデアへの反応を見る
ー 旅行者が自分の部屋にホテルように泊まりに来るサービス、を表現した紙芝居を見せてアイデアへの反応を見る
④それも通過した仮説は、最小限のコストと時間をかけて作ったプロダクト(Minimum Viable Product)を実際に使ってもらうことで最終検証する
ー Air Bed and Breakfastと銘打ったブログを開設し、空いている民間人の部屋の写真を掲載。Inquiryフォームから予約ができるようにして、実際にユーザーが使うか、何を気にするか、等を見る
上記はかの有名なAirBnBの事例で、正確にどのような仮説を持って検証していったかはわかりませんが、概ねこのようなプロセスを経たはずです。そして、④のブログによってサービスを開始するというアイデアは実際にAirBnBが行ったことで、その狙いはやはり仮説の検証にあったはずです。今のAirBnBはスーパーおしゃれなデザインで、たくさんの機能がついていますが、そこまで作りこんでからサービスを始めるのではなく、最小限の努力でサービスを作り上げ、実際の顧客の反応を持って仮説を検証していく、という方法です(最も重要な仮説は、「これ、お客は使うの??」)。
この方法論がどこまでアフリカの文脈で通用するのか分かりませんが、少なくとも今生き残っているスタートアップでこのプロセスを経ていない会社は存在しないと思います。ある種まどろっこしいとも言えるこんなプロセスを経るのは、やはりスタートアップは「すごいポテンシャルがあるけど、まだ誰も成功していない」ような突飛なアイデアを攻めるものだからで、逆に言えばモデルとして確立しているビジネス、例えば床屋とか八百屋とかならあんまり必要ないとも言えます。
アフリカでスタートアップ、を標榜している以上は、こういったプロセスを意識して、しっかりとした検証を踏まえて事業を進めて行きたいと思います。