ナイロビイチ押しのスタートアップ- 宅配業界のUber: Sendy
今、ナイロビでイチ押しのスタートアップ、それはSendyです。
https://sendyit.com/
ビジネスモデルは一言で言うと配達版Uberで、専用のアプリで地図を開くと付近を走るバイク・ドライバーが表示され、それを押すと料金が出てきて、確認ボタンが出てきて物品の配達依頼が出来る、というものです。タクシー業界を揺るがしているUberと同じく、トラックを購入しドライバーを雇って教育するというモデルを変えた、宅配業界を揺るがしそうなモデルと言えます。
ただ、アイデア自体は全くの異次元という感じではなく、Uberのビジネスモデルを知っていれば誰でも思い付きはしそうなものです。
Sendyがイチ押しなのは、それを現実にするまでのプロセスが教科書のようにしっかりしているから。ナイロビ滞在中に同社のCEOをお茶をする機会を得て、どうやってビジネスを軌道に乗せたのかを聞いた時、そのしっかり具合と思考の明瞭さに思わず感動してしまいました。
前回、「思いつくビジネスアイデアの大半は間違っている」と述べたが、それを防ぐ為の方法論であるLean Startupを地で行っていました。
特にMVP(Minimum Viable Product:最小限のコストと時間で作った製品)の考え方が素晴らしい。Lean Startupの究極的な目的は、「誰も欲しくないゴミを作る時間とコストを省く」ことで、その中で重要な位置を占めるのが、どのようなMVPを作り、MVPの結果をどう評価するかですが、良くある落とし穴は、MVPをminimumに出来ないこと。どうしてもあれも、これも、と余計な機能やデザインを足してしまう。
MVPがMinimumでないと、作るのに時間とコストがかかる上、検証の評価がしづらくなる(見るべき項目が多いので)、そして、検証の結果修正をしようとしてもまたそれに時間がかかる。結果、本当にお客が欲しいものが出来るまでに逆に長い時間を要してしまうということです。
Sendyはすごい。
彼らのMVPは、
①会員登録一切必要なし
②一画面だけのアプリ
③その画面にドライバーの位置が表示される(あらかじめ4人だけにスマホを支給していた)
④ドライバーのアイコンをクリックすると即電話がかかる
以上、です。
すーぱーーーーーーシンプル。
私のような素人だと、「ログイン画面はこうでー」「ドライバーを選ぶと星が表示されてー」「支払いはカードかM-pesaかが選べてー」等と、永遠に機能を追加し続け、サグラダファミリアアプリを構築してしまうこと間違いなしですが、彼らはここまでLeanにスタートしたわけです。
彼らは、検証したい仮説が明確だった。だから、ここまでシンプルなMVPに出来たのです。
一番確かめたかったこと、それは「宅配を頼みたいけど、どこに頼めば良いかわからない」という課題を顧客が抱えているのかどうか、でした。
そして、このアプリを無料で配布して、実際にユーザーが使うかどうかを見れば、それは検証できるのです。だって、このアプリの機能は「ドライバーの位置を見える化して、宅配を依頼できるようにする」ただそれだけだから。
そして、このメインの仮説が実証された上で、顧客の他のフィードバックを参考にしながら、アプリの形を変えていったのです。例えば、「ドライバーとの料金交渉が嫌だ」という声を受けて(そしてそうなってから初めて)、アプリ上での決済機能をつけました。また、「毎日最低いくらか儲かるという保証がないとやりたくない」というドライバーの声を受けて、Sendy登録ドライバーは毎日1,000kshの最低報酬を得られるという形にしました。
ウーバーのパクリをしただけでは、おそらく後者の発想は出てこないと思います。人を雇わないのが売りのモデルなんだから、固定報酬を与えるのは間違っている、と考えてしまいそうです。まさにアイデアは実際に検証されるまでは誰も正しいかどうか言えない、ことの好例と言えます。そして、Sendyはこのプロセスを、偶然ではなく、全て初めから意図して実行してきたのです。
Sendyはこうして得た生のフィードバックを活用し、最初は4台しかいなかったドライバーを半年のうちに数百台の規模にまで拡大し、今ではナイロビ以外の複数都市にも展開するようになりました。創業開始が2015年なので、たった2年半で、今ままで存在しなかったビジネスを全国展開するところまでもっていったのです。
2015年6月にエンジェル投資家から約5千万円程度のプレシード資金を得たのを皮切りに、その後もSeed(投資家不明)、(Pre?)Series A(Safaricom)と着実にFundingを得ています(Series Aまで行ったということは、既にValuationは10数億円には達しているものと思われます)。
すごいぞ、Sendy