宅配業界の大転換期に突入(3/3)2018年後半:変革の始まり
さて、前々回(第一回)に2014年くらいまでのウガンダの宅配業界の事情を記載しました。
前回(第二回)に、そこからグローバルプレイヤーが入り、新興プレイヤーが勃興していく様を記載しました。
今回は2018年後半からさらに一歩進み大きな変革が起こっている状況について記載したいと思います。
真に顧客ニーズと向き合い、市場の変革をするのは誰か?
これまでは、老舗のプレイヤーにしろ、他業界からの参入にしろ、グローバルプレイヤーの参入にしろ、色々なプレイヤーが入っていますが、真にウガンダの顧客ニーズと向きあい、社会と向き合い、宅配市場を変えていこうと考えるところはありませんでした。
老舗プレイヤーは老舗プレイヤーの上に胡坐をかき殿様商売を続け、
他業界からのプレイヤーは、本業の既存アセットを活かしながらの差別化を図りつつ、大きなリスクも取らず、先行投資も抑えながら入っていました。
老舗プレイヤーも他業界からのプレイヤーも、現地のウガンダ人が経営陣の企業が多く、サービス事業のような、長期的な視点で複雑なオペレーションを管理し、多様なスタッフの経営マネジメントをするのは得意ではありません。
その場その場の利益で判断するような商売は上手だなと思う一方で、長期的に見て全体的に見て、そして多様な職種のスタッフを管理しながら、柔軟に運営するのは高レベルなマネジメント能力そしてガバナンス能力が必要となりますが、そういうビジネスの歴史が浅い分、グローバルスタンダードと比べると稚拙な組織も少なくありません。
一方、グローバルプレイヤーも世界各国で鍛えられた素晴らしいオペレーションノウハウ、標準化されたシステム、ガバナンスがある一方で、ウガンダのマーケットに沿って柔軟に変えるのは得意ではありません。横展開で取っていける部分はもちろんありますが、そうではない部分も大きいのが実情です。
そんな中、昨年後半からスタートアップが参入して来ます。
他国の宅配スタートアップの事情
ウガンダの宅配スタートアップの事情を話す前に、他アフリカ諸国の話を少しだけ。
ウガンダのデリバリ―ビジネスにはまだまだちゃんとしたスタートアップはありません。(少なくとも昨年まではこれまでありませんでした。)
しかし、ケニアやナイジェリアなどは何年も前からスタートアップがサービスを開始、それに合わせて既存プレイヤーもアプリやテクノロジーを駆使したサービスを展開しています。
ナイジェリアは、Kobo360、Max Okada、Deliveryman、ACE、Hubbon、MFS Delivery、CityRunなどのスタートアップに加え、
既存プレイヤーのSwift、Red Star、Tranexなどもテクノロジーを駆使したサービスを提供し、レッドオーシャンになっていると聞きます。
ケニアは、Sendy、Glovoを始め、Twiga Foods、Uber Eatsなどのスタートアップ、
そして、既存プレイヤーのG4S、Speedball、Manbo Courierなどもあるようですね。
他国の最新の情報は追っていないので、既に撤退している会社や衰退している会社もあると思いますが、
近年の外国からの巨額な資金調達を活用し、テックを活用し、宅配に新たな風を送り込んでいる事は間違いありません。
(Sendyも、今は小物宅配から大型に移行していたりなど、目まぐるしく変わっていて、その国にいないこともあり、中々タイムリーには追えません。)
そんな中、ウガンダは昨年後半までは特に新しい動きはありませんでした。
スタートアップの参入
まずは、Godelです。
インド系ウガンダ人の家系の3世か4世の若者が始めた宅配スタートアップです。

東アフリカの大手企業は、インド系の財閥である事が少なくありません。(感覚的に3-4割以上の大手はインド系でしょうか)
ウガンダの場合、独立後のイザコザで一度外国企業は締め出されていますが、それでも戻ってきて、何十年も事業をしています。
特に大手財閥たちは物凄い影響力を持っています。どこも10以上の事業を持ち、各事業でシェアを独占しています。
Godelの創業者は、家族が長年ウガンダで様々な商売をしている家系のインド系ウガンダ人です。
https://digestafrica.com/godel-delivery-jumia-uganda/
聞いた話によると、元々はAramexで勤めていて、そこを辞めて今の宅配スタートアップを起ち上げたようです。
2018年初めに創業し、物凄い勢いでサービスを増やしています。かなりの投資額を入れているようですが、まだ資金調達はしておらず、おそらく家族の他の事業のお金を入れているようです。
(ただ、今年の記事で、資金調達をする計画はあると言っています。)
Godelは、Aramexを始め、ウガンダにある宅配企業のイケてる人材をヘッドハントしてチームを作っているようです。
宅配料金もこれまでの半額程度。サービスレベルも挙げて、明朗価格で、新しいところをどんどん開拓しています。
Godelに続き、ケニア勢スタートアップも入ってきているようです。Speedballは昨年から入ってきています。
そんな中、先月8月に衝撃が走ります。
ついにSafebodaが宅配サービスを始めました。
Safebodaはウガンダ発のバイクタクシーのライドシェアサービス。
ムズング(白人外国人)が始めた事業ですが、ここ数年で資金調達も加速し、ケニア展開、ナイジェリア展開もしているイケイケスタートアップです。
ウガンダも2018年当初は1000台に満たなかった登録台数が、現在は13000台近くまで伸びています。
Safebodaが人の輸送だけでなく、モノの輸送も始めるというのは大きな衝撃でした。
遅かれ早かれ入るだろうとは思っていましたが、思ったよりもずっと早かったです。

Express Deliveryそして価格面では他社が追従できないレベルです。
1万台以上の登録台数からバイクタクシーを呼ぶような感覚で宅配ボダを呼ぶ時間は数分以内のピックアップです。
そして、値段もバイクタクシーの値段であり、それは他社の1/5程度になります。
ただ、まだまだUIもイケてない事、乗車人がいない状態で目的地に届けるという宅配オペレーションとタクシーとの差異が大きい事。ライドシェアであり直属のスタッフではないからこそ、宅配ドライバーとしてのトレーニングに時間がかかる事。
などがあり、まだまだ時間はかかりそうです。が、時間の問題ともいえます。
我々CourieMateがこの中でどうやって、彼らと競合し、共存し、マーケットの中で存在感を出しながら、新しい宅配の形、そして社会の形を作るのか?が求められています。
※ここでは詳しく書きませんが、私なりに成功へのシナリオはいくつか持って取り組んでいます。
その他宅配関連スタートアップの勃興
上記のような純粋な宅配サービスに限らず、ショッピングデリバリ―などを含めれば多くのスタートアップが参入してきています。
フードデリバリ―分野は、いち早く参入がありました。
2015年に、Jumiaが当時はHello Foodという名前でやっており、後にブランド名統一でJumia Foodになりました。(デリバリーは自社ではなく、デリバリ―会社などを利用)

その後、ケニアのYam Deliveriesが入ったり(今は撤退しているはずです)、
2017年にはSimba Foodsというウガンダ発のサービスが始めました。ここはインド人のIT企業が始めたところです。
他にも、KFC、Pizza hutなどもJumia以外に自社で独自に持ってデリバリーをしています。
ショッピングデリバリ―の分野は、特にGrocery(生鮮食品)系が最初に入りました。
Jumia Foodがいち早く生鮮食品を始めましたが、市場価格と比べて結構高い商品も多いのが現状です。
他にも、現地発のスタートアップが小さく始めて撤退したりなどを繰り返しています。
Hello Fresh、Fresh Go、そして最近だとMinute5などがそれにあたります。
ここ数か月は、Groccery以外に日用品全般を含めてのショッピングデリバリ―に加えて、Consumer以外にSmall Business向け(B 2 smallB)のショッピングデリバリ―サービスが出てきています。
ここまでくると、デリバリ―ビジネスではなく、流通分野になってきます。
ここ1か月くらいで、バルクでローカル市場から購入できるKikuubo Onlineがローンチしました。
まだまだInformal Sectorが流通の中心であるウガンダ。その中でも日用品はKikuubo Marketにいけば購入できる!と言われるほどの、ウガンダのローカル流通の要所です。

Kikuubo OnlineはそのKikuubo MarketのVirtual Shopping spaceを狙っています。
Kikuubo Marketについては、2年ほど前にも記事を書いていますので、こちらを参考に
似たようなサービスは以前にもありましたが、Kikuubo Onlineが本気だなと思わせるのは、その価格です。
Jumia foodも日用品は扱っていますが、普通にスーパーマーケットで買うよりも1.5倍から2倍するものも多く、それだけ出すならば自分でスーパーで買い物する。と思う価格です。(さらに宅配料金も取られる)
一方、Kikuubo Onlineの価格はスーパーよりもずっと安く、本当に卸マーケットであるKikuuboの価格と同等か近い価格で販売しています。
ただ、まだサービスは始まったばかり。本来は数時間以内の配送がウリのようですが、
私が2週間くらい前に頼んだ時には、注文から届くまでに5日かかりました。
木曜の朝に注文し、注文の確認電話があったのは30分後。ここまではまずまずです。
その後、木曜には連絡なく、金曜にこちらから問い合わせしました。金曜には届けると言われ待っても来ない。
土曜日の朝に連絡して、『商品が足りないからちょっと待ってて。今日中に届けるから。』と言われ、土曜にも来ない。
日曜になり、『Vehicleが故障しているから送れなかったの。今日には届けるから。』と言われ、案の定来ない。
そもそも、配送する車もバイクもせめて数台はあるだろうに、なぜ一台故障したくらいで来れないのか。。
そして、届いたのは月曜の昼過ぎでした。
Kikuubo Onlineのターゲットは一般消費者よりもKioskなどの零細小売店(Informal sectorの小売店)になります。
(もちろん、一般消費者も使えます。)
Kioskへの流通といえば、Sokowatch。
ケニア発のスタートアップで、Kiosk向けの商品のメーカーからの集中購買と配送を行うイケイケのスタートアップです。

2013年に創業し、ナイロビのキオスクへのサービスを提供。2018年くらいからタンザニアにも進出。今年はウガンダへの進出もしています。(ウガンダへのサービス展開はまだのようです。)
これまで500万ドル~750万ドルの資金調達をしており、直近の資金調達はウガンダを含む他国展開の用途が中心となっています。
メーカーからの直の購入により、卸値を抑え、キオスクへは24時間以内に配送料無料で届けるサービスです。
当初はSMSでの注文だったのが、今はスマホにも対応。
そして、キオスクのレーティングにより掛けでも買えるようになったようで、キオスクの決済にも入り込んでいます。
Kikuubo OnlineとSokowatchは実質的には同じ業態になります。
我々もキオスクのInformal Sectorへの流通を考えている事から、この分野からは目が離せません。
持続可能な発展に重要な流通・物流の変革
今後、アフリカおよび世界が持続可能な発展をしていくうえで、流通や物流の変革は必須だと考えています。
持続可能な経済の発展、そして社会の発展にとって、物流や流通は肝であるにも関わらず、影の存在である事から、軽視されがちです。
いにしえの時代から行われている活動だからこそ、古い常識も多く、しがらみも多い分野です。
これまでのように、大量に作ってグローバルで売りさばく大量消費社会が長続きするとは思えません。
一部の超大手企業が流通を支配・管理するトップダウン型ではなく、ボトムアップで分散型の流通網の方が時代に即していくのかもしれません。
(この辺りの詳細は、具体的に新サービスが立ち上がる時にまた書きたいと思います。)
そのような想いを持ちながら、我々は新しい宅配そして流通を作り上げたいと思っています。