独裁政権からみるコロナ対策

ウガンダで宅配事業をしている伊藤です。

ここ数か月、ニュースやSNSの投稿の大半がコロナ関連になっていますね。
当初はいわゆる感染症対策や医療・保健問題であったのが、どんどん経済的、政治的、そして社会的な問題へと発展しています。

多くの方の関心は、『いつまでこの状況が続くのか?』であり、
世界の様々な賢人が、世界の現状を整理しながら推測を共有してくれています。

多くは先進国かつ民主政治が前提となっているため、
途上国かつ独裁政権の場合にはどうなのか?を考察したので共有したいと思います。

先進国VS途上国(新興国も後進途上国も) × 民主国家VS独裁国家の掛け算で状況は異なるかと思います。
もちろん、ウガンダは独裁政権による途上国になります。

4つで場合分けした際のシナリオについて纏めてみました。
皆さんから、フィードバック貰えると嬉しいです。

4象限での纏め

(1)民主主義な先進国:
報道に多く出てくる国々はこちらでしょうか。
以下の慎さんの記事にあるように、体力のある先進国は人権・医療・ポピュリズムと経済・社会不安・治安の狭間で政策が二転三転しながら2年から数年にわたり長期化する可能性が高そうです。

もちろん、民主的に最善策を出し、早期に解決してくるような国も出て来るとは思います。(台湾はそうなりつつあるのでしょうか?)

COVID-19と世界のこれから
https://note.com/taejun/n/n89c97045d123?


(2)独裁的な先進国:
経済的な体力もあり、強権をもつ独裁的な先進国は、ポピュリズムに左右される事なく、医療・人名と経済損失のバランスを上手く取ってくるのではないでしょうか。

※独裁政権の良し悪し、長期的に繁栄するかはここでは議論の対象とはしません。
現時点で独裁的であれ先進国としての発展をしているならば、コロナ対策の数年は上手く打ってくるように思います。

(3)民主主義的な途上国:
体力のない途上国で民主的に政治をしているところは、大きく揺れ動く可能性もリスクも秘めているように思います。

上手く短期間で国民を納得させながら解決する道もあれど、ネガティブケースとしては、
右往左往する中で、これをチャンスと捉えて、人命優先を大義に政権が独裁的に走る可能性もあれば、
社会不安の増大からのクーデターや大規模デモに発展する可能性もありそうです。

(4)独裁的な途上国:
社会不安が高まる中、早期に感染防止を諦め、元々医療リソースがないのだから、他の疫病と同じく感染対策は最小に行い、普通に経済を回す。方向に一気に舵取りする可能性が高そうです。


途上国にとって、いつもの災害や内戦と異なり、世界規模で起きており、局所的でない事から、国連や他国からの援助や救援を望むことは難しいように思います。
特にトランプ政権になり、アメリカがこれまでのように国際的なリーダーシップを取る方向には動いていません。911やリーマンショックの時のように、世界で一丸となろう!という動きが起こっていません。

いち早く立ち直りつつある中国が各国への支援を始める中で、新たなリーダーシップを取る流れも出てきていますが、過去の経緯を考えると、どうなるか分かりません。。
途上国などは、経済的な傀儡になってしまうリスクもあります。

なぜWHOは中国に牛耳られたのか…? コロナ危機のもう1つの真実
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71876

大半の民主主義に基づいた先進国は、各国の程度の差はあれど、以下の前提に基づき対応しています。

・【医療リソース】医療レベルが高水準にあり、医療リソースが(平時の状態では)整備されており、治療可能な病でみすみす人が亡くなる事は非人道的であり現代社会において避けるべきもの。


・【民主政治(監視機能)】民主主義が機能しており、過去の過ちから強いリーダーが独裁的に物事を決める事は許されない。市民から政府への監視が行われるべき。


・【人命と人権】ゆえに、コロナで重症者が出た際に治療できる状態にもかかわらず医療リソースがひっ迫する事を理由に治療できない等はあってはならない。


・【人権】感染拡大を阻止するために、政府が移動の自由、事業活動の継続を奪う強権を発する事には慎重にならざるを得ない。


・【社会不安、所得減少のための補償】先進国の多くは、フォーマルセクターの経済で回っており、今でこそ、副業、フリーランス、ギークエコノミー等が出てきているが、依然として圧倒的な主流は勤め人。勤労者であるが、雇用者が即明日から解雇する例は全体からすれば少ない。


もちろん、零細企業や商店は、売上の低下、キャッシュフローの問題があるが、全体の経済に占める割合は(途上国と比較すれば)そこまで大きくない。
そこの補償をしなければ社会的不安に陥りる。そのため、政府は損失を補償すべきである。と考えている。


【民主主義(ポピュリズム)】人権や人命の観点に加えて、移動制限をせずに感染拡大を容認する事は、大多数の国民から支持を得る事が難しく、民主主義における政治家にとっては判断できない。


一方で、移動制限をする事経済的損失が大きくなった場合に、所得補償、経済支援をしないという判断も、社会的不安の増大や治安悪化に加え、民主主義における政治家にとっては判断できない。
ポピュリズムの民主政治の観点からも、移動制限は必要であり、移動の自由、事業活動の継続を奪う事で発生する損失は政府として補償しなければならない。

このような考えて動いているように思います。

(アフリカ)途上国における状況

さて、いわゆる”途上国”と呼ばれる国でも先進国と似たようなロジックで対応をしていますが、状況は大きく異なります。

アフリカを例に挙げると、
・【医療リソース】
多くの国でそもそも医療レベルは平時から低水準にあり、コロナで言われる人工呼吸器、エクモ、ICU等の医療リソースは非常に限られており、治療方法も予防方法も確立されている病でさえ、毎年多くの人が亡くなっている。
マラリアを例に挙げると、蚊に刺されないという予防法があり、感染しても早めの薬の投与で重症化も避けられる病でありながら、年間40万人程度が亡くなっています。

そのため、感染者が広がりアウトブレークしても、医療リソースもほぼ無いため重症者を救う事はできないのですが、コロナに限った事ではなく他の疫病でも同じことが言えます。

・【社会不安、所得減少のための補償】
体力の先進国が人権・医療と経済的損失(とそこから来る社会不安、治安)の狭間の中で揺れ動く中で、
インフォーマルセクター、日雇い労働者、フリーランス、一日単位で自転車操業の自営業・零細企業が主流の経済(都市部)では、1週間のロックダウンでも受ける影響は甚大になります。

ウガンダでは感染者数名の段階で、公共交通機関を停止しました。
先進国、電車、バス、地下鉄などの国営や大企業が運営する公共交通機関であり、仮に公共交通機関の利用を停止しても、利用者は困るにせよ、企業の従業員が即無職になる事はありません。

ウガンダにおいて、公共交通機関はバス、マタツ(乗り合いバス)、ボダ(バイクタクシー)になります。
バスはバス会社の運営ですが、マタツはフリーランスのドライバーが個人から一日3000円程度で車を借りて街中を走らせています。バイクタクシーも自分のバイクかどうかに関わらず、その日の収入で食いつないでいます。公共交通機関に限らず、ローカルの市場、食品や日用品のバイヤー(ブローカー)、キオスク商店などインフォーマルセクターで日常生活が回っています。

経済封鎖やロックダウンは、この層には即生き死にに関わってきます。

※一方で、田舎においては、農業主体であり自給自足に近い生活を営んでいるからこそ、幸いにも短期的にはサバイバルリスクは高くないようです。しかし、長期化に伴い、現金収入が無くなる事は、医療や教育などの貨幣経済の支出には大きな影響があります。(こちらは先進国も同様でしょうか。)

先進国以上に緊急支援が必要な中、政府予算には平時から余力もなく、戸籍・住民IDなどの管理も行き渡っていない国も多く、所得税ですらまともに徴収できていない状況で、所得補償などは難しいように思います。

独裁国家における状況

民主主義国家と独裁国家ではその対応も異なります。
ここで、先進国=民主主義国家ではなく、独裁的な政治を持つ先進国もあるため、一旦わけて考えます。

先進国でも独裁色が強い国家としては、シンガポール、中国などでしょうか。

独裁色が強ければ、移動の制限や経済封鎖を自粛要請ではなく強権で発動しやすくなります。
人権的配慮も法律的遵守も、選挙でえらばれるかどうかの観点でポピュリズム的な配慮をする必要はなくなります。

ちなみに、民主化が進んでいた国でも、これを機に、独裁的により戻そうとする政治的な動きも出てきてているようです。(ハンガリーとか)

以下のNHKの番組の中で、イアン・ブレマー、ユヴァル・ノア・ハラリ等がコロナを機に、民主主義を放棄して独裁を強める動きに警告を出しています。

”民主主義は平時ではよいが、有事になると決断が遅くなり機能しないから一時的に権力者に権限を預ける事が民主主義崩壊の始まりの常である。
これまで、一時的に民衆が手放した権力が平時になって市民側に戻ってきた試しはほとんどない。
有事こそ気を付けるべきだ。”

のような話がありとても興味深いです。

ETV特集 「緊急対談 パンデミックが変える世界 ~海外の知性が語る展望~」
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2020106789SA000

ウガンダ、ルワンダを始め、アフリカには実質独裁の国家は多く存在します。
コロナの件で、各大統領の声明発表を比べるとその差は歴然です。

(安部首相とムセベニ大統領を比較する事がフェアに当たるか分かりませんが、)

安部首相は、お願いベースで説得、要請しているのに対して、
ムセベニ大統領は、軍隊の将軍のごとく、命令に近い口調で声明を出しています。

安部総理が、法律に基づき法律違反なく施策を出す一方で、
ムセベニ大統領は、彼の口からその場で出た事が法であり、その時の文言を皆(メディア、警察、省庁)が解釈して動きます。(解釈に大きな幅があり混乱があった場合は次のスピーチで明確化されることもある)
朕はは法なり!という口調で話しますし、実際に世の中もそうなっています。

独裁途上国の一つウガンダはどうなるか?

私の最大の関心はウガンダ政府、ムセベニ大統領がどうかじを切るか?です。

上記を踏まえて一つの大きな可能性としては、
他の体力のない途上国が感染防止を諦め、ぽつぽつとロックダウンや移動制限を解除して行く中で、
ムセベニ大統領も諦めて経済を動かし、感染者が増えても仕方ないという方向に動く事です。

今は強権を振るい、制裁ありの強力なロックダウン、経済活動封鎖をしています。3/26からのロックダウンは当初の3週間を超え、現時点では5/6まで計6週間続く事になっています。

人道的配慮については、この国はお世辞にも元々配慮しているとは思えません。
コロナによる死者はまだゼロな中、違反者は警察による鞭打ちを受けたり、発砲により死傷しているケースも良く挙がっています。

ある程度の人道的な無視を通しても国内を抑えられるだけの強権を持っています。
2021年の来年の選挙も、『経済を優先してこれ以上のロックダウン、移動制限は行わない。後は国民が一人一人気を付けてくれ!以上!』としても揺るがないだけの政治基盤はあるはずです。

であれば、財政不安や経済不安から来る社会的不安を避けるために、他のマラリアや腸チフス、妊産婦の感染症、交通事故と同じく社会がリスクを許容する。という施策を取る方がウガンダという国を安定的に維持するには合理的に思えます。

もし、いつものように先進国や国連機関などが援助してくれると想定しているならば、今回に限ってはあまり期待できません。

感染拡大を容認して早めに経済や社会活動を優先する方向に舵を切る可能性も高いと思っています。

一方で、合理的な判断が行われないのもこの国の政治であり、
今回の過剰なまでの移動制限や経済活動の制限の中には感染防止に大きく寄与しないものも含まれています。
大統領自身も高齢であり、コロナに感染するとウガンダ国内では助からないという思いから、非常に厳しい対策を取っているという噂もあります。

国益最大化の合理性を無視した決断も十分にあるため、
引き続き、ウガンダの動向に注視していきたいと思います。