社員を大切にするということ

アフリカで起業をする際の社会的意義を議論すると”雇用創出”について触れる方が少なくありません。私もモザンビークで起業する前にはそう思っていましたし、今でも部分的に同意します。しかし、実際にアフリカで起業して現地の人を雇ってみて思うことは”雇用するということは基本的に日本と同じ”だということです。雇用創出はもちろん大切ですが、雇っている側としては 『雇用を生み出しているという満足感』 などは微塵も感じませんし、雇用を生み出していてもそれが良いものでなければ意味がないと思うからです。日本でこれまで自分を雇ってくれていた上司の方、日本で企業を経営しておられる方のことを思い、改めて頭が下がる思いです。

良い社員は企業の成長の為に欠かせない、企業の宝ともいえるものです。長く会社で頑張っている社員は可愛いくて、そんな社員の頑張りとか誠実さとかで本当に一喜一憂します。私の場合やはり社員とは友達という感じではなくある程度距離はあるのですが、子供の話・婚約者の話・奥さんの話などを聞くたびに”幸せな人生を歩んで欲しい。そしてその時にVerde Africaで働いていてくれたらいいな。”と思います。

昨年10月に起業し2月から機械生産を始めた今、Verde Africaには計7名のモザンビーク人社員がいます。採用の際に公募はしておらず、友人や社員の紹介を中心に雇ってきました。パートタイムの社員は最初は日雇いで週2回程度働き様子を見ます。その後、仕事ぶりにより固定メンバーに加えます。最初の頃は”時間通り来ない””無断欠勤をする””嘘の報告をする””チームリーダーの指示を聞かない”など問題のあるスタッフが多く、解雇と採用と訓練を繰り返してやっと現在のメンバーが定まってきました。

モザンビークの労働法は比較的労働者寄りの内容になっており、病欠・有休・冠婚葬祭に関わる特別休暇や試用期間(基本的に90日、技術職・役職の場合は180日)や争議に持ち込む場合の手順などが記載されています。弊社は担当弁護士や労務専門家がいないこともあり、労働監督基準局の踏み込み捜査とか考えただけで怖いです。

一方でモザンビークの失業率は24.3%(出典;外務省HP)と高く、 『なんでもいいから雇ってくれ』 と弊社を訪れる人も後を絶ちません。労働法はインフォーマルセクターでは最低賃金も含めて全く遵守されておらず、やはりモザンビークの現実にそぐわないものなのではと感じる時もあります。

弊社の仕事はいわゆる 『3K – きつい、汚い、危険』 です。危険は当てはまらないかもしれませんが、一日中炭を扱い社員の手は爪の間まで真っ黒ですし、商品も原料も炭なので女性でも50キロくらいの袋を運んでいます。でもそんな3Kの仕事が産業発達の基盤を支えてきたのは日本でもイギリスでもアメリカでも一緒で、モザンビークにとっても価値のあることだと考えています。

 (炭屑を粉状に砕く仕事。体中真っ黒になります)

いかに3Kな仕事でも給料が良ければ不満が生まれにくいはずです。弊社も給料を将来的には増やしてあげたい気持ちは一杯なのですが、生産量と売り上げを伸ばそうと奮闘している現在赤字を拡大してでも給料を増やすべきかは慎重になります。

でも先日6ヶ月ほど連勤した社員が突然辞めてしまい、とても正直で働きものの良い人だったのでショックを受けています。弊社の社員待遇や接し方について見直す良い機会と捉えていますが、彼が腰を痛めていたことを知らなかったなど反省点ばかりです。

最後にモザンビークの人を雇う際にこれまでやってみて良かった点を挙げてみたいと思います。

  1. 信頼できる人の友達を紹介してもらう (良い人の紹介は基本的に良い人が多いです)
  2. 素直な人が過半数以上になるように雇用する (全体の雰囲気はすごく大事)
  3. 食事で不満を抱かせない (給料が安くても、空腹にならないようにする)
  4. リスペクトを持って穏やかに接する (感情的になって言葉尻が鋭くなるのは絶対だめ)
  5. 決まりごとは文字化して全体に丁寧に周知する
  6. 育ってきた環境やそれに伴う価値観の違いについて相手の目線から考える
  7. お葬式に関わる欠勤(事前連絡があるもの)関してはできる限り理解と同情を示す

今の目標は現在のコスト体制で経常収支が黒字化したら、社員の給料を上げて一部の社員をフルタイム化することです。社員待遇と収支のバランスは鶏と卵のようなものなのかもしれません。人を雇うということについて周りには先輩方ばかりだと思いますので、モザンビーク人からも日本人からももっといろいろ学んでいきたいと思う今日この頃です。