異文化でのBtoCの難しさ➁

BOM DIA!こんにちは。Verde Africaの有坂です。日本は猛暑のようですね。マプトでは少しずつ暖かくなってきていますが、まだまだ夜は毛布が必要な寒さです。前回のブログから大分時間が経ってしまいましたが、後半部分をお伝えしたいと思います。前回はモザンビークと日本で家庭における節約感覚が異なっているという私の考えについて綴りました。今回はこの違いが生まれる背景に考えてみました。


➀ 貯蓄サービスへのアクセス 

サブサハラ・アフリカでは総人口の66%にあたる人口が預金口座を持っていない。(欧州開発銀行2017年レポート)この預金口座を持つ34%には、モバイルマネーの口座のみを所持している人口も含まれる。モザンビークも例外ではない。この数字を統計上は知りつつも、モザンビークに住むまでは何故銀行口座の利用率が低いのか疑問に思っていた。実際、当社に勤めるモザンビーク人スタッフ11人のうち使用可能な銀行口座を持っているのは1人だけ。M-PESAの口座は9人が持っているけど。

これは銀行の手数料が割高なことと、引出しや預入れにかかる時間が膨大なことが起因していると思う。日本の普通預金は月次口座維持費がかからない。しかし、モザンビークを含めた海外の口座では、月次維持費や手数料が馬鹿にならない。もっと、大変なのが預入れだ。ATMには何故か預入れの機能がなく、現金を預金するためには1-2時間程並んで待たなくてはいけない。手数料が割安な銀行ほどいつも混んでいて待ち時間が長い。これでは、小額を口座に入れて貯金しようという気持ちにはなれない。こんな現状だから、ぎりぎりのレベルの収入でやりくりしているモザンビーク人が少額を口座にいれてコツコツ貯金する気持ちにならないのも理解できる。

だけど、モザンビーク人が貯金に興味がない訳ではない。銀行口座に預けるという形を取らないだけだ。シュティックと呼ばれる頼母子講のようなグループ間貸し借りも活発に行われている。私がアフリカでBtoCビジネスをするにあたって、最もためになったと思うのは、この本だ。BOP(Base of Pyramid)層と呼ばれる貧困層の生活に密着してお金の流れ(収入、貸付、借入、貯金、保険など)をリアルにレポートして分析している。

最底辺のポートフォリオ スチュアート・ラザフォード(著) 他5名

この本にはBOP層の人々は実に多様な形でお金を運用し、いざという時のためにリスクをヘッジしている。ただ、フォーマルなサービスを利用しにくいが為に、不便を被る場合が多いということだ。実際にモザンビークに住んでみて、本当にそうだと実感する。

例えば、当社のR君は結婚式にかかる費用を貯めることに大変苦心していた。ある日のR君との会話はこうだ。

R君『最近、結婚資金を確保するために毎月貯金しているんですよ。』
私 『どうやって貯金しているの?銀行口座に預金するとか?』
R君『結婚式に必要なものリストを作って、少しずつ購入していってるです。』

彼らにとっての『貯金』とは必ずしも『お金』を貯めることではなくて、大切なお金を自分にとって価値ある資産に変えて保存することも含まれるのだ。資産というと大袈裟だけど、ついついビールを買ってしまう前にお米を買うとか、流動的な資産を非流動的な資産に変えて保管することに、ある程度重きが置かれているのではないか。当社の若手社員が給料日の2日後には、一文無しになっているのはあながち飲み代で使いきってしまっている訳ではないはずだ(と思いたい)。

ぎりぎりの収入で生活しているからこそ、このようなお金の使い方になるのだろう。手元に現金があると、泥棒とか火災とかいろいろな意味でそれがなくなってしまうリスクがあるけど、一番のリスクはやっぱり自分への誘惑だ。それは日本でもモザンビークでも一緒かもしれない。でも、お金に困っている家族が多くて人助けの心が強い、アフリカの人々にとっては尚一層誘惑が多いはずだ。

何が言いたいのかというと、お金を貯めるための手段が限られているモザンビークでは、1円でも安いものを買う努力よりも、10円を無駄使いしない努力の方が重視されているのではないかということだ。言い換えると、『1円節約してもそれを少しずつ貯めて、1万円にする方法がないならば、無駄になる前に少しでもより有意義なことに使ってしまいたい』という心情だ。携帯電話のデジタルマネー(M-pesaなど)が重宝される背景にはこんな背景もあると思う。

➁ より良い人生を求めてどのくらいの時間軸で行動するのか

モザンビーク人の将来への投資は『マイホームの建設』だ。土地の価値が上昇し続けることは皆よく分かっているらしい。銀行口座を持っていないけど、土地とマイホーム(建設途中)を持っている人はすごく多い。銀行に預金しても、インフレ率も高いし、通貨の価値が激変するかもしれないし、そんなリスクを理屈ではなく肌感覚で良く理解しているのだろう。自分の老後のセキュリティと現在の家賃節約を借入無しに実現できるなかなか賢い方法だ。(建設途中の家に住む我慢すらできれば)

将来について熟考するから、貯蓄や投資をするという側面もある。貧しかったり、希望がない状態だったりすると、将来について深く考えないことは大切な保身術の一つなのだろう。そして、今を楽しむことも将来に向けて蓄えることと同じように大切なことだ。モザンビークの人は家族に関係したお祝い事には積極的にお金を使うように思う。子供の誕生日にケーキを焼いて隣人と一緒に食べたり、親戚の結婚式に素敵な髪型とドレスを着て出席したり、大学の卒業パーティーを開いたりという行事を大切にしているように思う。その時にお金がなければ我慢するしかないと諦めるし、あればその時を大切にすることを選ぶのかもしれない。

節約感覚1つをとってみても、文化や経済事情で変化するので面白い。楽しみながら節約できる商品を提供することがアフリカで価格競争していく要素だと考える。