山奥の土地を購入して営業許可を取得するまで
ケニアの山奥で温泉宿の乾です。 これまで3回の投稿でケニア国内で温泉が出る土地を探し周り、ついに見つけた火山性噴気孔のある土地でスチーム・サウナを設置したというところまでお話させていただきました。そう、まだオープン前ではありますが、ここまで来るのにも一筋縄にはいかなかったのです、、、というお話を今回はしようと思います。

ケニア国内、温泉が出る土地を探しながらエブル村のこの場所に行き着いたのが2017年初めのこと。村中をくまなく見て上がった候補のうち5つの火山性噴気孔とリフトバレーの絶景があるという条件的にもダントツのNo.1有力候補だったここの土地。もともとケニア政府がイギリスから独立した際に国民に与えたもので土地オーナーR氏はここをを父親から遺産として譲り受けていますが、権利書類的には何もされておらず、なんと土地オーナーのお祖父さん(!)名義のまま。遺産として土地を譲りうけるにしても権利を移行するのにはお金がかかることから貧しい土地オーナー家族は今まで土地をこうして外国人なんかに売ることはなかったことだし、(実際には土地を売ってはいるがどれも対村人なので口約束的な方法で済ませていた)そのままにしていたというもの。

それでは外国人である自分がこの土地を購入して宿業を始めるにはどうすればいいのでしょう? ケニアの法律では外国人がここのような農業用地Agricultural Landを購入するには基本的には会社を設立して会社名義で買うということになります。外国人が土地を占有することを防ぐ為の法律なのか、土地を買う会社も役員や持株が一定数ケニア人によって占められていなければなりません。当方は2007年にケニア人と結婚したことから以前彼女名義でナイロビに土地を購入した経験もあり、妻を会社の代表の一人とすることで、ここ山間部の土地購入もスムースにいくはずでした。

エブル村のギトゥンボという名の集落にあるこの土地は、噴気孔といい、景色といい、自分が考えていた温泉のある宿を始めるにはぴったりのイメージの場所でした。山奥でありながらも高速道路からのアクセスもそう悪くなく、首都ナイロビからでも早朝出発すれば、天然スチーム・サウナに日帰りで入りに来れるという立地条件は温泉というテーマでケニア中の土地を見た経験からも貴重なものであることは分かっていました。そんな中、一つだけネックだったのが土地の権利書がケニア建国時のままであるということ。調べたところ、そこから土地オーナーへの権利移行、そして自分の会社への権利移行とするまで最低1年から2年はかかるということでした。。。。この事実を知って、うーむ。。。となり、また1か月エブル村と近くエレメンタイタ湖付近で再び土地探しをしましたが、やはりあの土地しかない。。。そう思わせるだけなのでした。

ナイロビで個人事業を展開する方のツテで外国人の土地取得関連に強い弁護士を見つけ、他の事業主が施行している方法なども参考にしながら土地購入の契約を交わして購入することにしました。土地の権利が当方の会社に移行されるまでいくつかのステップがあるので、その証拠書類を基に段階毎に支払をしていくという方法で、さらに実際の権利が移行されるまで、自分は土地に入植して宿の工事を進めるという条件も盛り込んで弁護士の証人の下契約を土地オーナーと交わし、2.5エーカーのこの土地購入と権利の取得を進めました。宿業の営業許可は土地の権利を取得することで初めて申請が出来るようになるというものでした。
弁護士と作成した土地売買契約書を基に土地オーナーに前金を支払い、工事を開始しました。資材は最も近い町からトラックで運び、労働力はここエブル村に暮らす若い衆に声をかけて開始。当初はアースバッグ工法と呼ばれる土嚢に土を詰めて積み上げていくという方法をメインに実施。半年後には最初の建物とサウナ1号が完しました。

それまではテント泊で滞在していたので電気も水もないことから、10日ぐらいが1度に滞在できるマックス期間でしたが、建物が出来たあたりから電気はソーラー電気を施設、雨水を収集して飲料水にするシステムも構築したので、ここの場所に常駐するようになりました。山の中の荒野だった場所でそう不自由なく生活が出来るような基盤が出来たのが2017年もそろそろ年末になる頃。土地の権利移行も予想以上にスムーズに進み全行程の7割近くが終了し2018年の中ごろには取得できるのではないかという矢先のことでした。妻が急死したのです。
そして権利移行のプロセスの最後の難関であった土地審議会による会社役員へのインタビューが出来ず、却下。。。新たに以前の同僚だったケニア人をパートナーとして登録して申請をやり直し再申請。運が悪ければ、ここからまた新たに2年土地権利を取得するまで時間がかかるかもしれない。。。と分かった時は、一度この事業を置いて、出稼ぎのために日本に帰ることや再び東アフリカで行われている国際協力系のプロジェクトに応募して従事することなども考えました。

しかし営業もまだ始めていない状態の中、一度国を出てケニアでの滞在期間が少なくなると、取得した投資家ビザも再び一から申請し直すことを余儀なくされるということや、こんな山の中でも自分が不在にすると2か月もすれば今まで建てた建物や金目の物、大半が持っていかれる(!)ことを覚悟しないといけないなど。やり直しは逆に非常に難しくなるとしか思えず、村人との手作り作業の体制で工事を続けていき、残った資金で何とか開業まで漕ぎつける、という決断を下しました。昨年2018年2月のことです。

それから1年半後の今。今年に入って土地権利の手続があれよあれよと進み無事ケニアの山奥の温泉付きの土地2.5エーカーをゲット。そして本年7月には営業許可が取れてしまったのです! 不正の王国なんて言われる悪名高きケニアですから営業許可が取れるまで、曲がり角には必ず賄賂の罠が隠れているような状態でしたが、、、話し始めるとこれまた長くなりすぎるので、、、また別の機会に !