TOPISH Bakery No.76 ~インターン編②~

ガーナのパン屋の石本です。
休業指示を出したTOPISH Bakeryのその後について書こうと思っていたのですが、インターンに来ていた近藤さんの文章を読んで、是非この文章を皆さんに読んでもらいたいと思い、先にご紹介させて頂く事にしました。では、どうぞ。

皆さん、こんにちは。
パン屋でインターンしていた近藤彩香です。
これを含め後2記事ほど書きたいと思っています。

さて3人衆がパン屋から出ていき、さっそく心配事が。
「果たしてこの3人でパンを売っていけるのか?」

ということでした。Francisは過去に一人で18個売り上げたことがあり、6人の中で一番できる子です。しかしYawとJoeはあまり売り上げの成績が良くなく、特にJoeは10個以上売り上げたことはありませんでした。そんな中迎えた初3人での配達日。その日はKofiの作業を手伝ったので、つきっきりで見ることができませんでした。彼らを迎えに行く前、どのくらい売れたのかと考え、

「5個売れてれば良いな。」

と低く予想しました。なぜなら期待した分結果が出なかったときの失望感を回避するためです。なんと、その日は3人で10個以上売り上げてきてくれました。この数字にKofiと私はびっくり。これなら3人でやっていけるかもしれない、と少し希望をもった日でした。

日本人1人になって初めての配達日。パン屋に向かうといつもHawkersをTanosoに送ってくれるKofiの姿はなく、FrancisとYawだけいました。するとFrancisが、

「Joeが朝からお腹が痛いから今日は売りにいかない。」

と私に言いました。休む必要があるときは休むべきだと思ったのでとりあえず承諾し、その日は2人で売ることになりました。またKofiを待ってから向かったのでTanosoに13時ごろに着いたのもあって、その日は11個しか売ることができませんでした。

一緒に行ったKofiは

「全く彼らはseriousではない。」

と言っていましたし、同じHawkersのおばちゃんが現地語でFrancisやYawを叱っているようでした。しかし万全の体制で売れば良いと思っていたので、次の日に賭けることにしました。

 その次の日。生産のお手伝いをしながらNanayawが、

「11時30分過ぎてるからHawkersを連れていく必要がある。Kofiに聞いてきて。」

と言いました。

なのでKofiに

「今日は何時にHawkersを連れていく?今行きたいんだけど。」

と聞きました。

すると彼は

「燃料費が毎回かかっているのに、彼らがパンを売らないからそれすら回収できない。燃料費の無駄だ。Distributer達が燃料費を出して俺にお願いすべきなのに、全く俺の事をリスペクトしていない。Nanayawが連れてくべきだ。」

と断られてしまいました。こういう時は何を言ってもダメで、ひたすら「OK、OK」と言うしかありませんでした。

NanayawにKofiが言ってことを伝え、彼は、

「今はパンの生地を切っている。忙しいのわかるだろ?今すぐいけない。」

と言いました。KofiとNanayawに挟まれ、お互いの愚痴を聞かされた私は「そうだよね。」としか言えなくて、早く生産が終わるよう一生懸命手伝うことしかできませんでした。

最終的にNanayawが連れて行ってくれましたが、生産の後だったので昨日と同じ時間に着きました。FrancisとYawはすぐに売りにいきました。この日はなぜかNanayawの弟とBrightの弟も一緒に来ていました。もちろん彼らはパンを売ることはなく、スマホでゲームをし始めました。昨日お腹が痛いと言ったJoeはすぐに売りに行こうとしません。なぜならそれをずっと見ていたからです。売りに行こうと声をかけても全く動く気配がなかったので、しばらく相手せずほっておくことにしました。FrancisとYawを見ながらひたすら彼を待ち、動き始めたのはあれから40分経った後でした。Joeには特別に、15個売ったら私のガーナ用携帯、10個売ったらパーカーをあげるというルールを設けています。にも関わらず全く売ろうとしない彼の行動は、特にこの日はひどく、少し苛立ってしまいました。基本パンのストックを置いてある場所から彼らを観察し、戻ってきたら「すごいね!」「やればできるじゃん。」「頑張れ!」など、たくさん励ましの言葉をかけています。またそこから動いて彼らの動きを見ながら声をかけ、パンの持ち方や立つ場所などのアドバイスをしています。しかしその日は一時的に彼らの姿が見えなくなり、普段いる場所のエリアを探しても見つかりませんでした。1時間30分ぐらい経った後、3人がパンを片手に戻ってきました。

「どこ行ってたの?もっと向こうのほうに行ってたの?」

と聞くと、彼らは半笑いしながら「そうそう。」と答えたので、「絶対嘘だな。休んでたな。」と思いながらも、どこか行くときは声をかけるように伝えました。すでにもう17時。彼らは18時を過ぎるといくらパンが残っていようが「もう渋滞がなくなるからNanayawを呼んでくれ。」と私に言ってきます。

その日の午前中は、石本さんからパン屋のグループチャットでなぜ11個しか前日売る事ができなかったのかという理由を聞かれ、路上でパンを売れるような戦略を考えてほしいと言われていました。また独りだったこともあり、「なんとか結果を出さないと。」と自分で自分を追いつめていた、と今になって思います。だからその日は彼らが一生懸命売ろうとしない姿をみて、いつもより苛立ち、彼らに対して「なんで売りに行かないの?」と強く言ってしまいました。またサボっている写真をわざと撮ったりして、自分もされたら嫌だろうなと思うこともしてしまいました。それぐらい焦っていたのです。

そして他の同年代のHawkersと話していたり、「お腹痛くて。」「売っている途中で足を痛めた。」などの言い訳をして売りに行かずただ眺めている彼らに嫌気がさし始めました。時刻は18時を回り、「後1時間しか粘れない。」と感じた私は、両手にパンを持ち、お客さんと一番近くなるところに立つ作戦にして、ひたすら「バターブレッド、5セディ。」と言う事にしました。もちろん売ることはせず、名前だけでも覚えてもらおうと必死でした。「何してんだ?」「アジア人がパンを持ってなんか言ってるぞ。」と道行く人に常に見られ、笑われました。それでも彼らのためになるならと一生懸命やりました。

するとFrancisが「Nanayawを呼んでほしい。」と私に言いました。「全部売れたの?」と聞いたら「うん。」と答えたのでさっそく電話し、彼に迎えてに来てほしいと頼みました。また自分が持っていたパンをFrancisに託し、売るように頼みました。「やった。それ以外全部売れたんだ!」と思い、スタッフの弟たちにも「今日全部売れたの?やったじゃん。」というと「そうそう。」と答えました。こうしてパンのストックしてある場所に戻ると、見たのはまだ残っているパンと、Nanayawを待って動かないJoeとYawの姿がありました。

「あれ?全部売れてない。なのに彼らは私にNanayawを呼ばせたの?」と思いました。

そして失望した私を笑うメンバーの弟たち。Francisもそれ以上売らずに戻ってきました。

「何これ?なんでまだ残っているの?どうして?」

「あんなに笑われても彼らの為にただひたすら立っていたのに?」

「一時的にいなくなったとしても信じて彼らをひたすら待っていた結果がこれ?」

悲しくなって、涙が出てきました。必死に隠そうとしても涙が止まりませんでした。彼らの為に費やすこと、本来は彼らが考えていかなきゃいけないことを、わからない中必死に考えて実行していること、もう全てがばかばかしく思えてきました。彼らに投資した時間と労力が全く帰ってこない気がしてきて、ただただ悲しかったのです。

「彩香、どうして泣いてるの?」

とFrancisが聞きました。

「あなたたちの世話をするのが疲れた。」

と答えることしかできませんでした。私と仲が良いHawkersの方が現地語で私の代わりに「あなたたちが売らないからよ。」と説明してくれたような気がしました。アクラからクマシに戻ってきて以降1日も休むことなくパン屋に通い続け、昼前には必ず到着し手伝い、夜遅く帰る生活をすでに2週間続けていた私は、体力的にも精神的にも疲れていたのかもしれません。あくまでも中心は彼らであり、私はそれのサポートです。パンを売り、パン屋に貢献するのは彼らです。しかし私はマネージャー的な存在だからこそ、いつのまにか彼らに期待し、勝手にガッカリした結果として涙が出てきたのだと思います。彼らに期待しなければ涙なんか出てきません。しかし私の考えを利用し結果を出すには、彼らと信頼関係を築く必要があります。彼らの協力が不可欠だからこそ、どうしても「ここまでやってほしい。」と期待してしまいます。彼らに真正面から向き合おうとすればするほど、期待してしまったのです。

帰る車の中でNanayawに

「今日泣いたのか?なんで泣いたんだ?」

と言われ、思い出してまた泣いてしまい、パン屋についたときも泣いてる私を見て「ごめん。」と謝り、「もし必要だったら俺がishimotoに伝えてHawkersを止めることもできる。彼らの為に出す燃料費や彼らが出したロスを考えても、明らかだ。」

と言ってくれました。ホテルに到着して、いつもお世話になっているJeffryやその友達に出迎えられディナーに誘ってくれました。そのJeffryの友達が私の顔を見て、「今日泣いた?何かあったの?」と聞きました。理由を説明しようとしてまた涙が出てきました。1日で計3回泣きました。こんなに人前で泣き顔を見せたのは久しぶりでした。次の日は水曜日で配達日です。「こんな状態で彼らに会いたくない。何も考えたくない。」と初めて思いました。ガーナに来てから初めて意図的に1日休むことにしたのでした。