No.12 TOP Bakery 衰退期 ~遠隔運営~

ガーナのパン屋の石本です。
前回は遠隔運営する為に、スタッフ達が自分達で事業を運営できるようにトレーニングを重ねて行った事について書かせて頂きました。
今回は2016年4月以降のTOP Bakeryの状況について書かせて頂きます。

 

DMM.Africaに参画して以降、首都アクラでの新規事業構築が主な業務となり、また東アフリカへの出張が増えたりとTOP Bakeryに時間を割く事が物理的に難しくなっていきました。

 

また、意識的に、パン屋のマネージャー達に自分達で考えて動く様にと殆どの裁量をマネージャー達に与え、石本は日々の売上の確認(毎日Excelに記入して送付してもらっていた)と、収益の使い道の判断(貯金しておくのか、プロモーションに使うのか、設備投資に回すのか、など)と、スタッフ間の諍いの調停などを担当していました。

 

日々の売上については、インプットされるデータが正しくないとこちらも正しい経営判断ができず、日々夜中に数字を見ては、「この数字がおかしい、あれはどうなっているんだ」とメッセージや電話で確認する事を繰り返していました。自分としては出来る限り「見ているよ」という姿勢を見せようと頑張っていたのですが、やはり物理的に工場に石本がいない時間が長くなって来ると、様々な面で綻びが出て来るようになりました。

 

生産量・売上については、ダブルチェックの体制になっていて、1人で好き勝手に数字を弄れないような仕組みにしてあります。例えば、生地を100個成形した場合、生地を成形したメンバーと焼きを担当するメンバーで数字をカウントします。翌日、パンを焼いたメンバーとパンを配達するメンバーで数量を再度確認します。もし、配達前で100個以下であれば、パンを焼いている内にパンが消えた、という事になり、焼きのメンバーの責任となります。また、販売金額についても、配達メンバーとマネージャーが2人一組となりインプットする仕組みとなっており、間違った入力をされると配達メンバーも損をする為、マネージャーがちゃんとインプットしているか確認する事になります。

 

遠隔で事業管理をする様になって半年ほどした頃から、マネージャーから販売レポートが送られて来る頻度が落ちる様になって来ました。何度催促しても無視するか、後で体調が悪かったと言い訳をしては、数日分の数字をまとめて送って来るのですが、パン屋のスタッフ達に聞いても数日間マネージャーが何をしているのか、どこにいるのかわからない、という回答が返って来る事が多くなって来ました。

 

マネージャーはガーナでも一番優秀な大学を出ており、頭の回転も早く、性格も明るく頼れる存在でした。彼が一緒にパン屋をやってくれるなら頑張ってみよう、と思い、一緒にパン屋を立ち上げ、寝食を共にし、パンが売れない日々もどうにか乗り越えて来れたと感謝しています。そんな彼に、「石本が返ってくるまでパン屋の運営をお願いしたい」と託し、彼も彼なりに頑張ってやっていてくれていたのだと思います。

 

遠隔での運営をしつつ、週末などを利用してはパン工場を訪れる時間を作っては、パン屋のスタッフ達とコミュニケーションをとるようにし、みんなの話を聞くように努めました。お調子者のマネージャーも石本がくる数日間は頑張るそぶりを見せ、「これこれが問題だ、だから俺たちはこうしていかないといけない」等とさもやってる風に取り繕うのですが、要所要所で「普段パン屋にきてないんだな、スタッフとコミュニケーションをとってないんだな」というのが垣間見えるのでした。

 

私も一年以上一緒にやって来たメンバーだし、今彼が頑張ってくれる事を信じて更にサポートするしかない、と毎回マネージャーに指示を出して激励はするのですが、一週間もするとまた同じ様な状況に戻るのでした。その内、マネージャーが適当に仕事をやっていると、下のスタッフ達の仕事も適当になって来ました。販売スタッフは、パンの数も合わないし、パンの品質も悪くなって、販売が難しいとメッセージを送って来る様になり、女性スタッフからも、男性スタッフがパンを盗み食いしている、夜工場に来た人たちに勝手に売っている、女性スタッフに対して暴言を吐いている、というメッセージがくる様になり、それら一つ一つにメッセージと電話で対応するしかない日々にもどかしさばかりが募っていきました。

 

創業者と同じ熱量と仕事量で動いてくれる事を期待してはいけない。

 

そう、日本人の先輩方から指摘を受け、本当にパン屋を継続させたいのならもう一度石本自身が現場に戻らないといけないよ、というアドバイスを受け、現実的に今パン屋に戻ることのできない状況に何度も悩みました。

 

そして、数字上、利益が出ているにも関わらず、工場に現金がないという状況が発生する様になり、スタッフからも給与の支払いが遅れている、工場で壊れている場所があるのに修理するお金がない、といった金銭に関わる苦情が頻繁に届く様になっていきました。

 

遠隔操作を騙し騙しやって来て、一年半ほど経った2018年頭頃、マネージャーとのコミュニケーションはより難しくなり、スタッフ達の悲鳴は大きくなり、数名の女性スタッフが離職する事になりました。

 

「石本、あなたのマネージャーはあなたのお金を盗んで、みんなを騙している、私たちはこれ以上ここで働けない」

 

一年半、何とか彼が再起して事業を回してくれる事を信じて出来る限りのことをやって来たつもりでしたが、彼女達が離職する事をきっかけに、再度自分の力不足を痛感し、自分にとって何が大切なのかを考える様になりました。このままではうちのパン屋で働いているスタッフ達がかわいそうだ、自分は何の為にパン屋をしているのか、と再度原点に戻ろうと考えました。

 

次回、石本がDMM.Africaを退職して、ガーナのパン屋に戻って事業再生を開始する話についてお話できればと思います。