No.13 TOP Bakery 衰退期 ~撤退or再生~
ガーナのパン屋の石本です。
前回は約1年半に及ぶ遠隔運営により、事業が壊滅的な状況まで悪化していた事についてお話させて頂きました。
今回は2018年1月以降のTOP Bakeryの状況について書かせて頂きます。
女性スタッフ達の離職を機に、再度パン屋をどうしていくか真剣に考えました。
まずは、撤退するにしろ、継続・再生させるにしろ、しっかりとパン屋の状況を把握しないと決められないと考え、頻繁にスタッフ達と連絡を取る様にしました。そこから感じられたのは、スタッフ間の不信感と諦めでした。
2〜3月には大学生インターンにパン屋に入ってもらい、現場の様子を報告してもらっていたのですが、マネージャー達が如何に経営に無関心で機能していないか、数字がめちゃくちゃか、目を背けたくなる様な現実を突きつけられました。
報告される数字は信頼できるものからは程遠く、ほとんど参考にならない状況でした。また、運転資金(現金)、材料サプライヤーからの買掛金、お客さんへの売掛金などキーとなる数字についてはマネージャーもはぐらかしてばかりで、何度催促しても「大丈夫だ、ちゃんとやっている」と数字を出すのを渋る始末。
当時、ルワンダに駐在していたのですが、会社からも日本に帰ってくる様にと辞令が出たタイミングで、これはガーナに帰るしかないと考え、3月頭に帰国したその翌日に会社に辞表を提出し、3月末で退職させてもらいました。それから4月頭に有難くも短期の仕事をもらい、すぐにガーナに渡航してパン屋にも数日滞在することが出来ました。
パン屋滞在中、現金・買掛金・売掛金などについて辛抱強く確認していきました。
現金はすでに殆どなく、小麦粉会社からの買掛金は100万円以上に膨らみ、そして売掛金は配達員任せで管理がされていませんでした。
「it’s not easy, it’s not easy. It’s not my fault, I tried to do my best」
マネージャーは石本不在中にあった様々な出来事について理由を挙げました。
– 配達員が売掛金を持ち逃げした。警察に突き出したけどアクラに逃げたのでお金は回収できていない。
– 2017年のクリスマス・シーズンに購入した小麦粉の質が悪く、多くのロスを出したから小麦粉の代金が支払えなかった。
– 材料費が高くなった。マーケットが悪かった。
その話の殆どがでっち上げである事は他のスタッフ達からのヒアリングで分かっていました。
普通であれば、即刻クビにして、裁判所に連れていくのが正しいと分かりつつ、自分の中には「まだ自分が戻ってきて、一緒にいれば彼が再起できるかもしれない」という思いがあり、2017年4月の段階ではマネージャーの雇用継続を前提として、事業再生する為に資金集めと再生計画を作ることにしました。
2017年の夏にパン屋に戻った際マネージャーと飲みに行き、彼が言った「俺もガーナに生まれていなければ、石本みたいに仕事で海外に行ったりできてたのにな。フェアじゃないよな。」という言葉が頭から離れず、自分が彼の人生をダメにしてしまったのではないかとずっと考え続けてきました。
もう一度パン屋に帰ってくるから、彼もスタッフも将来に希望を持てる様なパン屋にしたい、そう強く思う様になりました。