No.15 TOP Bakery 再生期・中盤

ガーナのパン屋の石本です。
前回はTOP Bakeryの再生の様子について書かせて頂きました。
今回は事業再生の具体的な過程について書かせて頂きます。

 

材料調達については、負のサイクルにどっぷりハマっており、抜け出すことは優位ではないとすぐにわかりました。

 

材料を買掛金で購入する(後払いの分、材料費が高くなる) → パンを作り販売する(材料高の為、低利益)→ 材料費を返済して次の材料をまた買掛金で調達する

 

また、少し手元に利益が残ると、原料サプライヤーから取り立てに合う為、現金は常になく、急な支出が必要な際にはまた原料サプライヤーに借金を負う、と言うサイクルになっていました。

 

この様な環境下で、まずは2つの事に取り組む事にしました。
1つは、材料とサプライヤーの変更。もう1つは、レシピと生産体制の見直しでした。

 

材料については、為替の影響もあって年々値段が上がってきているにも関わらず、マネージャー達も改善に無関心で、気が付けば粗利で一桁台となっていました。(パンは粉物なので利益率は比較的高いはずなのですが、ガーナの場合は一斤あたり900〜1kgほどあり、元々利益率は低め)これではどんなに数を売っても利益は出せません。

 

すぐに、生産スタッフ達を連れて、原料サプライヤー達のショップを回り、材料の市場調査を行いました。
多くの材料サプライヤーがパン屋からの買掛金の未回収で苦しんでいる昨今、今にも潰れそうな信用力のないTOP Bakeryに新しく掛取引をしてくれる会社はなく、何社も回っては値段・質・決済条件が見合う材料・サプライヤーを探しました。

 

そんな時、シンガポールに住むインド人経由で紹介してもらったレバノン人サプライヤーから、「彼の紹介だから、君に買掛金でマーガリンとミルクを販売してあげよう。値段は現金払いと同じ金額でいいよ。好きなだけ持っていくといい」と泣きたくなるほど有り難いオファーをもらう事ができました。
翌日には約束通り、1500kgのマーガリンと150Lの缶ミルクが工場に届けられました。そして、その金額は今まで回ってきたどこのサプライヤーよりも安く、約束していた値段から更にディスカウントしてくれていたのです。

 

価格競争力がある材料を手に入れた私たちは、次にレシピの見直しと生産工程の見直しに着手しました。

 

TOP Bakeryのパンは、他社のパンよりも大きく重たい為、十分な利益を確保する為には一個あたりのパンのコスト管理が重要になります。
最初の数日は、新しい材料と配合を試し、限られたコストの中で味・食感を維持できる様に様々な試行錯誤を繰り返しました。
また、一番気になっていた生産量のブレについても検証するする事にしました。これまで小麦粉1袋で大きなパン(Wofa K)を80個ほどの生産していたのですが、計算上は85個以上生産できるはずだったのです。遠隔で何度も確認する様にと伝えていたにも関わらず、見直される事がなかった為、今回は石本が現場張り付きで管理する事にしました。

 

以前、デジタルの量りを導入した事があるのですが、測量までの時間が2~3秒かかり生産性が落ちる為、スタッフ達は使い慣れたアナログな量りを使っていました。そこで、アナログの量りでもしっかりと毎回同じ重さを計量できる様に、針を見る角度を決め、石本が抜き打ちで何個かのパンの重さを量り、何度も注意する様に促しました。
結果、大きなパンで安定的に85個以上/袋、小さなパンで128個以上/袋(以前は120個前後)と生産料が改善・安定する様になりました。

 

収益化が進み、8月は久しぶりに単月黒字化を達成。そして、地主と材料サプライヤーに裁判所に連れて行かれない様に少額ながら負債の返済をし、無事収益の中からスタッフ達の給料を支払う事が出来たのでした。