パートナーシップの検討、そして。。

どうも、竹重です。

少し前の話になりますが、僕がエチオピアでの事業展開に向けて、現地の乳製品加工会社とのパートナーシップを検討していた時の話です。

ヒロトゥ・ヨハネスさん(酪農家)

エチオピアでの法人設立準備を現在進行形で進めている僕ですが、当初、僕は現地の同業者の方とパートナーシップを組むことも視野に入れて検討していました。

そんな現地のパートナー候補だったのが、ヒロトゥ・ヨハネスさん。

チャチャにあるヒロトゥさんの工場

彼女は、もともとエチオピアの農業省に勤務していたのですが、今から約15年前、勤務していた農業省をやめて2頭の牛を購入し酪農家に転じています。

その後、2013年8月に規模の拡大とともに事業を法人化『Rut & Hirut Milk Cow Breeding Dairy Production & Processing PLC』を設立しています。

ヒロトゥさんは、首都アディスアベバから北東に100kmに位置するデブラブラハンという中規模の町の郊外チャチャに工場を持って主に首都アディスアベバに向けて乳製品を販売しています。

主な製品は殺菌乳、ヨーグルト、バター、エチオピアローカルチーズ「アイブ」、その他一部ヨーロッパ式チーズです。

バターの包装作業をするヒロトゥさんの従業員

前回も書いた通りエチオピアではまだまだ乳製品は需要に対して供給が全然足りていない状況の中で、地場の乳製品加工業者としては、中堅から大規模の間のスケール感ですね。

彼女とパートナーシップを組むことで、僕自身、事業の垂直立ち上げが可能かな?といった思いから当初パートナーシップを組む前提で面談を重ねていました。

当初、僕の思い描いていた双方のメリット・デメリットは以下のような感じでした。

僕のメリット

・ヒロトゥさんが構築している小規模農家さんからの原料乳買取ネットワークの活用

・現状、余剰感のあるヒロトゥさんの設備の活用により、初期投資を抑えられること

・法人設立に伴う最低資本金が現地パートナーを入れることによりUSD200,000からUSD150,000に抑えらること

ヒロトゥさんのメリット

・チーズ(欧州型)やアイスクリームなど商品ラインナップの拡充と技術へのアクセス

・追加の設備購入

僕のデメリット

・管理方法などすでに確立しているものがあるため生産プロセスの効率化などに対する反発

・シェア及びプロフィットシェアリングの問題

ヒロトゥさんのデメリット

・USAIDやSNVなど援助団体からの援助に対する影響

結果ダメだった。。

ざっくりと以上のようなメリット・デメリットが双方にありました。

また、ヒロトゥさんはすでにUSAIDやSNVからの援助を受けている経緯があり、僕がビジネスパートナーという前提で話をしているものの、どこかこうした援助機関と混同している節があり、別途ヒロトゥさんの会社で製品のラインナップとして弱いチーズ、アイスクリームなど範囲を限定しての別会社の設立を提案してもピンと来ていない様子。

ヒロトゥさんとしても、需要が大きいのは常日頃感じていて、追加のファンディングを得て設備を拡充するという意欲は旺盛だったため、とにかく僕に金を持って来てもらって設備拡充をしていきたいという思いは強く感じましたが、プロフィットシェアなどについては議論がおざなりに。。

現地の方とのパートナーシップを組むことの難しさを痛感しました。

また、この経験は、エチオピアでの事業を構築していく上ですごく有意義な経験になったのですが、中でも強く感じたのが、『自分本位の提案』だったなという思い。

もちろん、パートナーシップを組む上でヒロトゥさんにも利益がある形というのはすごく意識していましたが、0からビジネスを立ち上げて現在の規模まで拡大したヒロトゥさんの苦労というのは計り知れません。

そんな、彼女の苦労に対する敬意が足りなかったのと彼女の利益を意識していたとはいえ、すでに援助関係で無償の設備投資を受けている彼女にとっては、僕の提案は魅力に欠けていたのでしょう。

エチオピアにお邪魔させていただいているという意識をしっかりと持ってエチオピアの方々に敬意を払うこと、これはやはりエチオピアで円滑に事業を進める上ではすごく大事だなーとの思いに至ったわけですね。

エチオピアの既存の事業者さんとの競合は避けるべき。

そんなこんなで、結果的にパートナーシップを組むというのは、100%日本側で資本を用意しての法人設立をしようという結論に、マネージメントやガバナンスについて僕の描くビジョンが実現しやすい方向に舵を切ったわけです。

また、この経験から、立地としても出来る限り現地の既存事業者さんとバッティングしないようにということを意識するようになりました。

やっぱり、エチオピアという国全体で考えた時にまだまだ需要が足りていないわけで、同業者さんとも情報交換をしながら業界全体を押し上げていくのが、この国での『協力体制』の作り方かなと思います。

ヒロトゥさんの工場から見える風景

そんなわけで、バッティングしない土地選び。

エチオピアという国は、歴史的に北部のティグライやアムハラと呼ばれる地域・民族が国の中枢を支配して来ています。

そんな理由もあって、外国投資もやはり北部やアディスアベバ周辺に集中しています。

酪農事業者も基本的にはアディスアベバ周辺に集中しがちなのですが、あえて僕は南部で事業を開始しようとしています。

また、南部地域での事業立ち上げに向けてご協力をいただいているアワサ大学のシンタイヨ教授も僕のこの考えには賛同してくれています。

南部も気候的にはすごく酪農に適した地域があるのですが、やはり、同分野での海外投資というのは皆無で、小規模農家の方々に安定的な収入をもたす可能性のある事業計画にすごく期待いただいています。

やはり、まだまだ、マーケットに対する供給がショートしているこの国では、同業の方々とも意見交換しながら、みんなで産業を育てようという意識がすごく重要だなと改めて思った、そんな経験でした。

実際、同業者の方々と競合するよりも、地域であったり品目であったりという部分で差別化しながら産業全体をボトムアップしていく動きが広い意味での『協力体制』だとの認識に思い至ったわけです。

コメントを残す