京都の布×トーゴの技、miwodeka。

 奇跡的な出会いに恵まれて、京都の布 × トーゴの技、アフリカ大陸と日本をつなぐものとして、新作を発表できることになった。アフリカ・トーゴ出身のクチュリエによる京友禅のブルゾン。ぼくたちはこのブルゾンに「miwodeka(ミウォーデカ)」と名づけた。「MIWO DEKA」は、トーゴのエウェ民族のことばで「2つは1つ」という意味だ。初めてアフリカ大陸に足を踏み入れた2012年、お世話になった友だちがぼくにくれた大切なことばである。

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 今でも昨日のことのように覚えている。シューカツを辞めて単身アフリカへ向かったぼくは、当時、在留邦人が2人しかいない未知の国・トーゴ共和国へラジオ局のジャーナリストとして赴任した。鼻をつくガソリンのにおいと、鳴り響くクラクション、舞いあがる土埃、赤道近くの炎天下。その日はラジオ局への初出勤の日で、ドキドキしながら歩いていると、道を挟んだ向こう側の屋台から声を掛けられた。そいつは朝っぱらからビールを飲んでいて、ヒゲはもじゃもじゃ、へたくそなダンスを踊って、初対面のぼくにグラスを渡してきた。
 クソ暑いなかで飲むキンキンに冷えたトーゴの地ビールは、全身がとろけてしまうくらいウマかった。お互い誰なのかもわからないまま、一気に3杯くらい体にビールを流し込んで、彼は一生懸命に何かを伝えようと話しかけてくれるけど、ぼくは全然わからなくて、にもかかわらず、彼は屋台のマスターと腹を抱えて笑い転げていた。なんとか、彼の名前が「マックス」ということを聞きとり、ぼくはベロンベロンでラジオ局に向かったのだった。

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 それからなぜか、ぼくが行くところ行くところにマックスは出没して、毎晩のように飲んで騒いで、肩を組みながら朝まで踊った。彼はカタツムリを養殖するビジネスをしていて、なにかパーティーがあるたびに大量のカタツムリを持ってきていた。それをみんなで料理して、ぼくは周りの友だちに羽交い締めにされ、絶叫しながら人生初のエスカルゴ料理を味わったりもした。(カタツムリは貝のような味がして結構ウマい。)そんな楽しくて愛しい時間は、あっという間に過ぎた。
 トーゴを離れ、陸路でガーナへ向かうぼくを、マックスは心配だからと、国境沿いのバスロータリーまで見送ってくれた。ギロギロした目のイカついオジサンたちに絡まれたりしたが、彼は威嚇して追い払ってくれた。ガーナにいる彼の兄ちゃんの家でしばらく居候させてもらうことになっていたから、「今からトシがそっちに向かうからよろしく頼む」と兄に電話で40回くらい念を押していた。そのあとバスの運転手の胸ぐらを掴んで、「アクラのニュータウンのバス停にオレの家族がいるから、そこでトシを降ろしてくれ」と80回ぐらい怒鳴り散らすようにして伝えてくれていた。

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 バスが出発する直前、ぼくたちはいつもより長く、強くハグをした。ぼくは人目を憚らず号泣して、マックスはそれをみて爆笑した。「ミウォー、デカ」と、マックスは両手を合わせて言った。空を指さして「MIWO DEKA」と、ぼくの胸に手を当てた。人生で初めて、頭ではないところで、ことばを理解できたような気がした。
 あれから8年。めちゃくちゃ時間はかかってしまったけれど、「MIWO DEKA」、2つの地域や文化、肌の色、言語をこえて、1つのものをつくることができた。来月、いよいよ会社は3年目に突入する。攻めて、攻めて、攻めまくる。ぼくはまだ、ファイティングポーズをとっている。

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