バッグに詰め込んだベナンの職人文化

 さいきんは日本在住のアフリカ人がお店に来てくれるようになった。半年前、奇跡的にトーゴ出身の仕立て職人・デアバロさんと出会えたが、ふつうに考えて、こんな奇跡が起きるはずがない。それは奇跡ではなくて、これまでかかわることがなかっただけで、ほかにもたくさんアフリカ系の人たちがいると考えたほうが自然だ。調べてみると、日本にはおよそ1万5,000人のアフリカ人がいる。在留外国人のパーセンテージで按分すれば、京都には3,000人くらいのアフリカ人が住んでいることになる。

 とか計算していたら、なんと奈良県からベナン人・メラドさんが現れた。ベナンはトーゴの隣にあって、学生時代に旅したことがある。めちゃくちゃいい人たちが多くて、思い出深い国のひとつだ。その懐かしの国から来た彼は、ベナン人の職人たちが英知を結集して制作したバッグを携えていた。奈良県から慣れない車を運転してきてくれて、13時のアポが15時にズレ込みながら、いろいろバッグのこだわりについてプレゼンテーションしてもらった。

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 なかでも目をひいたのは、あまり見たことのない金色のアクセサリー。聞くと、かつて金の重さをはかるのに用いていた道具らしい。「ポワ バウレ(poids baoule)」といって、13世紀ごろから西アフリカ地域のアカン系の民族で使われていたという。しかも、そのへんのマルシェでは売っていなくて、手に入れようとすれば、生産している民族に辿り着かないといけない。貴重すぎて焦る。むしろこのアクセサリーを際立たせるためのバッグにしてもいいくらいに、その地域のアイデンティティがつまっているようにも感じた。

 メラドさんは、コトヌー出身の35歳。小学生のときにテレビでみた日本のロボット技術に憧れて、大学では機械工学を学んでいた。卒業後「たけし日本語学校」で日本語を学び、大使館の奨学金の試験に合格して2013年に来日した。名古屋大学で機械理工学を修士課程・博士課程で研究しつつ、留学生会の会長も務めていたらしい。社会人になってからは車部品の研究開発に従事。ずっと母国のために何かしたいと思っていた矢先に、日本人の友人にお土産でプレゼントしたベナンのバッグが好評で、自身の名を冠した「MELARDOT(メラドット)」を2020年からスタートさせたという。

 とにかく、ええ人すぎる。ひとまず店内にラインナップしてみることにして、お客さんからのフィードバックをもらいながら考えていくことにした。限定品、ご興味ある方は是非お店へ…!!!

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アフリカ布や京友禅で服を仕立てるお店

📮京都市上京区東西俵屋町144 京都西陣ろおじ内
🕚(金)(土)(日)11:00〜18:00
📞090-6373-3203(代表・中須)

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