フルオーダーのケンテ、生産開始
ケンテ職人のもとに通い詰める。
京都でいうところの、「一見さんお断り」である。
マルシェに出回らず、ごく一部の王族、役人、エリート層にしか販売しないというコットンピュアのケンテ。マルシェで販売されているものも、確かにいい。しかしコットンピュアのものは肌触り、風合い、オーラがちがう。
6年前、トーゴの友人と「みんなが笑って過ごせる世界をつくろう」と約束した。障害者差別の現実。それを打破したいと願う友人と語り合った夢だ。目の見えない人は、たとえば一般の人に比べて、耳が良かったり、感触をもって的確に判断することができる。耳のきこえない人は、察する能力が高かったりする。個性的は、魅力的だ。それぞれの個性を活かしたチームをつくる。
モノづくりであれば、それぞれが個性を活かし合って仕事ができる。そんなことを、ケンテ職人の大将に直談判した。
夜な夜な通い詰めた甲斐もあって、ついに大将が折れた。
「おまえみたいなクレイジーなやつは初めてだ」と。
話を聞くと、従業員も大将にお願いしてくれていたらしい。大将のところへ行くまえには必ず、従業員と話をしていた。現地語で挨拶をしながら、徐々に距離を詰めていたことが功を奏した。
とにもかくにも、完全フルオーダー、コットンピュアのケンテの生産を開始することができた。
「早速、材料の買い付けに行ってやる。トーゴのコットンピュア、腕利きの職人たち、俺らがどれほどすごい仕事をしているか見せつけてやる」と大将はハニカんだ。