ぼくはフランス語を話せない

 ぼくは西アフリカ地域に位置するフランス語圏のトーゴ共和国という国で、「一見さんお断り」の現地民族の職人集団に生産を交渉し、50人ちかくの方々に手伝ってもらいながら現地法人を設立した。そして来月は、フランス・パリで営業活動を開始する。ということを話していたら「フランス語が堪能なんですね」と言われることが多いが、日本語もままならないのに、フランス語を話せるわけがない。なんなら英語もTOEICは300点ぐらいしかないし、学生時代に履修していた第二外国語のスペイン語のテストは、メキシコからの留学生だったナンシーさんに付き合ってもらって居残り勉強しても、驚異の低得点を叩き出していた。だから、世間があっというほど語学力はない。

IMG_1190
フランス語もできひんのに何してんねんというツッコミを入れることに疲れたシェリタ


 でもぼくたちは、母語である日本語を話していても分かり合えないことがある。一方で、言葉が違っても、分かり合える瞬間がある。ぼくに外国語を話す力はないかもしれない。しかし自分の思っていることを伝えたい気持ちは、誰にも負けないくらいあるつもりだ。ぼくのばあい、その気持ちがある水準まで高まると、身体的なものとして熱をおびる感覚がある。その感覚があったとき、ぼくはあらゆる手を尽くして伝える。

 ボディランゲージはもちろん、絵を描いたり、ときには独自の言語(擬音語や擬態語のようなものであることが多い)を編み出すこともある。相手の表情や言葉の間、仕草をみながら、めちゃくちゃゆっくり話す。そうしてやってきた。お互いに立場(言葉や宗教、信念とか価値観とか)が違っているということを出発点にする話し合いは、かなりエネルギーをつかう。でもそれを乗り越えたとき、なにがいいかというと、ビールが死ぬほどウマいことだ。それ以上に何かを求めることがナンセンスだと思えるくらいに、美味しい。

 日常のなかでは、そういうことが薄まってしまうこともある。ストレスフリーに母語である日本語を話していると、あたかも自分と同じ(日本)人だと勘違いする。誰ひとりとして、自分と同じ人生を歩んでいないにも関わらず、そう思ってしまうことがある。そこで弊社では、自分が強く伝えたいと思ったときのポーズを設定している。相棒とは考え方がほとんど正反対ではあるが、お互いが考えていることを分かり合おうという意思表示のスタイルがある。相手と同じ立場にはなれなくても、ウマい酒が飲めればそれでいいと思っている。